海外の動向4: 医療検索エンジン Healia

Healia - your search for health

最近のアメリカのWeb2.0関連ニュースをチェックしていると、Search2.0という言葉をよく目にします。Google、Yahoo,MSNなど大手汎用検索エンジンの次の世代に、どのような検索エンジンが登場するか。すでに新しい技術も姿を見せ始めた中で、さまざまな議論がされています。現在の汎用検索エンジンは、「Web全体の可視化」という点ではかなりのレベルを達成しつつあるものの、ユーザーが求める情報を適切に提供するという意味ではまだまだ改善の余地が大きく残っています。

ニュージーランドのWeb2.0ウォッチャーであるリチャード・マクマナスが主催する有力ブログサイト「Read/Write Web」では、「Googleを打ち負かす検索エンジンはどれか」というアンケート調査を行っていますが、その中間投票結果は以下のようになっています。

1. Artificial Intelligence (e.g. Hakia, Powerset) 23% (123 votes)
2. People Powered Search (e.g. del.icio.us, ChaCha) 21% (115 votes)
3. Vertical Search (e.g. SimplyHired, Technorati) 15% (81 votes)
4. Personalized Search (e.g. Collarity) 12% (63 votes)
5. Clustering (e.g. Clusty, SearchMash) 11% (58 votes)
6. Social Search (e.g. Eurekster, Rollyo) 7% (37 votes)
7. Visualization (e.g. Quintura and Kartoo) 6% (33 votes)
8. Previews (Snap, Live Image Search) 5% (25 votes)

一位がなんと「AI」(人工知能)になっていますが、これはまだまだ「道遠し」といったところでしょう。しかし、AIを含めて、どの新技術やアイデアにもすでにチャレンジャーが、それぞれ具体的に出現しているところが注目されます。「空想物語」ではなく、「ネクストGoogle」をめぐる挑戦はもう現実に始まっているのです。

医療分野のバーティカル検索エンジン

上記の次世代検索エンジン有望度ランキングで、第三位に入っているのがこの前「Google Co-op」のポストでも少しご紹介したバーティカル検索エンジンです。医療分野でも、すでにこのサービスへの挑戦は始まっていますが、今回はその中でも最も注目される「Healia」をご紹介します。

今後、医療情報サービスにおいて、検索エンジンはますます重要になっていきます。これまでのWeb医療情報サービスの歴史を眺めると、およそ10年ほど前に「eHealth」などと呼ばれていた時代の代表事例であるWebMDに顕著なように、「自社サイトに医療情報をプールし、囲い込んだコンテンツとしてユーザーに提示する」 というスタイルが一般的でありました。しかしこれは現在でも医療Web分野では、実はあまり変わっていないのであり、病院サイトであれ企業サイトであれ、大半の医療関連サイトは自前で蓄積したデータを、自分たちのサイトで見せる、というスタイルを基本的に踏襲しているといえます。いわば自分たちのサイトを「囲い込み閉鎖領域」化しているようなもので、どうやらここから先へ進む気は、あまりなさそうです。

そもそも「自前ですべての医療情報を自己調達する」ことは不可能であり、むしろ「ネット全体から必要な情報を探し出し集める」ほうが効率的であることは論を待たないわけです。そこで検索エンジンの出番です。

優秀なフィルタリング技術

Healiaは非常にシンプルなインターフェイスを持った医療検索エンジンです。しかし、シンプルでありながらも、他の検索エンジンにはない特徴を持っています。それはまずHealiaのフィルタリング機能でしょう。

Healia

“cancer”(がん)で検索した結果が上の画面ですが、左側に”Filters”のチェックリストが配置されてあります。この”Filtersは以下の項目を、ユーザーの検索目的と属性に合わせて選択できるようになっています。

対象者向けフィルター

  1. プロフェッショナルズ
  2. 性別
  3. 年齢別(幼児、十代、成人)
  4. 人種(アフリカ、アジア、ヒスパニック、ネイティブアメリカン)

コンテンツ・フィルター

  1. 難易度
  2. 信頼性(HON、URAC、プライバシーポリシー)
  3. 情報形式
  4. ダウンロード時間
  5. テキストブラウザ対応
  6. 診断ツール

「対象者向けフィルター」の1は、医療専門家が専門的な医療情報を検索する場合にチェックする項目。2、3、4は対象者属性の選択。「コンテンツフィルター」では、「難易度」で「高校以下」と「大学以上」の情報難易度レベルを選択でき、「信頼性」では代表的な医療サイト認証団体の認証の有無、「ダウンロード時間」では遅い回線に対応させるかどうか、「テキストブラウザ」や「診断ツール」では特定のサイト仕様やコンテンツをチェックして検索結果を表示させることができます。

また、検索結果リストの上部には、検索結果情報の内容に応じたタブが用意されており、ここでもコンテンツ内容をフィルタリングして見ることができます。タブで選択できるのは、予防、原因とリスク、症状、検査、治療、薬品の各情報です。

なおページトップには検索語の類語、上位語、下位語などが参考例として表示され、一般的な推薦情報としてデフォルトでWikipediaの情報が掲出されています。

Healiaは、アメリカの国立がん研究所から助成金を獲得して医療検索エンジンを作り上げたベンチャー企業です。非常にシンプルな作りながらも多機能であり、バーティカル検索エンジンの一つのあるべき姿を先行的に示しているといえましょう。

三宅 啓   INITIATIVE INC.


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