Google Health予想をめぐる議論

先月、Vince Kuraitisがブログで展開したGoogle Health予想を紹介したが、その後、米国でこの予想をめぐる議論が巻き起こっている。議論は概ね次の二点に集中しているようだ。

1)私は、Google Healthの次世代PHR(Personal Health Records)を信じて、自分の個人医療情報を預けるべきだろうか?
2)Google Healthは本当に医療プレイヤーに採用され個人医療情報を共有することが出来るのだろうか?。なぜ、他のプレイヤーはGoogleと個人医療情報を共有しようとするのか、もしくは共有すべきなのか?。

まず、1)であるが、これはおなじみの「信頼性問題」。「予想」に対し「患者が、たやすくGoogleに個人医療情報を委託すると考えるのは、奇妙な話だ」という声が多かったようだ。これに対しVince Kuraitisは、以下のポイントを指摘し反論を試みている。

1.たしかにGoogle Healthは100%信頼できるものではない
2.「信頼性問題」はGoogle Healthに限った話ではない
3.もしあなたがGoogle Healthを信頼しないのなら、使わなければよい
4.誰かにあなたの個人医療情報を委託することの利益は、そのリスクを上回る
5.われわれ全体の時間やエネルギーは、個人医療情報の不適切なフローを阻止することに使った方がよいのか。それとも、個人医療情報の自由で適切なフローを創造することに使った方がよいのか。

おなじみの「プライバシーとセキュリティ」の二点セット。これに対する「信頼性」の問題は、Google HealthのみならずITシステムすべてに、常に付きまとう問題であった。だからこれはGoogle Healthを論じるポイントとしては、実はふさわしくないのだと。そのように問題を腑分けしようとする考えはわかる。「100%の信頼性がないから」という理由で飛行機を利用しないのは、それは個人の自由である。だが、だからと言って「飛行機は危険で有害」と社会的に決め付けることにはならないはずだ。

これらGoogleHealthの予想への批判と反論を読みながら、まず思ったのは、医療IT一般に対する議論から、個別GoogleHealthについての議論を判別しなければならないという点である。ただこれも、実際にあるのは「予想」だけであり、GoogleHealth本体はまだ実在しないのであるから、そもそも議論対象の特定が難しい。そう考えると、ある意味で「予想」の議論とは空しいものである。

しかし、実際にリリースされる前に、ここまで「予想」が議論されるということもあまりない。おそらくGoogle側もこれら「予想騒動」をじっと注視しているに違いない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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