Google、医療情報の「消費者権利」を提起

ConsumerRights

4月24日、米国ワシントンDCで開催された「第四回世界医療会議」(4th Annual World Health Care Congress)のモーニング・セッションでGoogle副社長アダム・ボスワース氏が登場し、Googleが考える医療における消費者の権利(あるいは消費者のパワー)について語った。

消費者の権利

ボスワース氏は医療における消費者の権利およびパワーを、以下のように列挙した。

・発見するパワー
・自分自身のデータを所有するパワー

・選択の権利:
  医療機関の選択、保険者の選択、治療の選択
・プライバシーのパワー

簡単に説明を加えると、「発見するパワー」とは「誰から、どこで医療を受けるか」をさがすパワーである。「自分のデータを所有するパワー」とは「自分の医療データの使い方を完全にコントロールする」パワーであり、ボスワース氏はこのことを「不可分の権利」とも呼んでいる。これは消費者が自分の医療データを、勝手に誰かに分割され、勝手に使用されない権利のことである。

「選択の権利」の「治療の選択」では、「医療者とのパートナーシップに基づく権利であり、もしも、医療者が患者を操り人形としてではなくパートナーとして見れば、患者の扱われ方は大違いになるだろう」と述べている。「プライバシーの権利」であるが、「何を誰に情報開示するか、そして開示を控えるかどうかを、消費者が決定することが出来る権利」と説明されている。

個人医療情報における消費者主権

今回のGoogleボスワース氏の講演は、Googleが医療情報サービスを「消費者主権」という観点から見ていることを明らかにしている。従来、「プライバシーとセキュリティ」という問題の立て方で、医療情報サービスが議論されるのが一般的であった。それに対し、Googleは消費者側の権利やパワーを起点にして、医療情報関連のシステムやサービスを構想すべきであるとの観点を提示したのである。

ボスワース氏が示した上記「権利とパワー」のリストでは、「自分自身のデータを所有するパワー」と「プライバシーのパワー」が相互に関係する事柄だと思われるが、医療情報を医療機関や政府ではなく、消費者自身が全面的にコントロールできるものでなくてはならないとするところがユニークである。

日本でも医療情報の「プライバシーとセキュリティ」が言及される機会は多いが、「消費者自身の全面的コントロールの権利」という「権利問題」として論じられたことはないのではないか。たとえば「システムの安全性」など、技術論に終始しがちなのが日本における関係議論の現状である。

米国における個人医療情報の問題

ところで最近の米国医療ジャーナリズムを見ていると、EHRやPHRなど医療IT化を進めることと「プライバシーとセキュリティ」を確保することが矛盾するのではないか、という指摘がわりと多いのである。

「プライバシー&セキュリティ確保は医療IT化の障害になっている」との見方まであからさまに新聞で書かれることもある。あるいは、HIPAAなど現行法体系が既に時代に合わなくなっているとの指摘も多い。今回の世界医療会議のボスワース講演に対して、「GoogleはHIPAAを覆す土台を構築し始めている」との見方をしているブロガーもいるようだ。

Photo by symbiotic
Source:WHC公式ブログ”World Health Care Blog”
三宅 啓  INITIATIVE INC.


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