慢性疾患患者のウェブ医療情報利用実態

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今週月曜日、ウェブと医療に関するユニークな調査実績のあるThe Pew Internet and American Life Projectは、調査報告書「身体障害あるいは慢性疾患をもったe患者」(E-patients With a Disability or Chronic Disease)を発表した。

それによれば、成人で慢性疾患や身体障害を持つ患者は、50才代以上に比較的多く、一般的にウェブ医療情報利用は健康成人よりも少ない。しかし、一度ウェブ医療情報を利用した慢性疾患患者・身体障害者は、調査機関いわく「熱心な医療消費者」となる傾向が強いそうだ。

Pewのアソシエイト・ディレクターであるスザンナ・フォックス氏は、

「かつて医療業界は、人々にインターネットで医療情報を調べることをやめさせようとしたことがある。しかし、いまや医療業界は、患者のウェブ医療情報利用の増加に注目し始めている。」

と述べた。

また調査報告書によれば、慢性疾患患者や身体障害者がよく利用する医療情報およびその利用率は、下記のような結果になった。

  • 特定の疾患あるいは医療問題に関するサイト: 73%
  • 治療方法や処置: 64%
  • ダイエット、栄養、ビタミン、サプリメント: 53%
  • 処方箋、OTC薬: 51%
  • 運動とフィットネス: 46%
  • 代替医療: 42%

これらの結果について同報告書は、「慢性疾患や身体障害と取り組むe-患者は、代替医療や医療費の情報により関心を持っているようだ」としている。ただ問題もある。調査結果によると、これらウェブ医療情報を利用する慢性疾患患者たちの多くは、見つけた情報の日付とソースをチェックしていないことがわかった。

「医師はいつも忙しい」と「熱心な医療消費者」の一人は報告書の中で語っている。「ウェブで情報を探すことによって、私は自分の知識のギャップを埋めることができる。そして医師に良い質問をすることもできる。私は、医師とは共有していないけれど、私の病気を理解するために大切な情報も見つけている」。

以上のような調査結果を読んで思ったのは、ウェブ上の医療情報利用が進むと、これまでの医療現場の「患者-医師」関係は変わらざるを得ないだろうということである。米国で「かつて医療業界は、人々にインターネットで医療情報を調べることをやめさせようとしたことがある」という事実は初めて知ったが、もはや患者側のウェブ医療情報利用の爆発的増加を、誰も止めることはできないだろう。

この調査で明らかになったように、「一度ウェブ医療情報を利用した慢性疾患患者・身体障害者は、『熱心な医療消費者』となる傾向が強い」のであれば、むしろ医療者側から、積極的で適切なウェブ医療情報指導をする必要も出てきているのではないだろうか。

「患者教育は患者の権利である」と言われるが、もしそうであれば医療者はその患者にふさわしい信頼のおけるウェブサイトを紹介し、積極的に学習の便宜を図っていくべきではないだろうか。最近アメリカで「情報治療」(Information Therapy)という考え方が提起されているようだが、医療現場でのウェブ医療情報活用がもっとされてもよいはずだ。

個人的な体験で言わせてもらえれば、あるクリニックで処方された薬剤が合わないのでウェブで情報を調べた上、医師にその情報をもとに質問をしたことがある。その時、その医師はウェブ情報を一顧だにせず言下に否定し、冷笑的な態度に終始するのみであった。

激しい怒りさえ覚えた。こんな「医療」は早く変わってほしい。患者は学習の機会と情報を切望しているのだ。

調査対象:米国成人、2,928人
調査期間:2006年8月
調査手法:電話インタビュー

Source:“E-patients With a Disability or Chronic Disease”
三宅 啓  INITIATIVE INC.


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