先月中頃、そのプロトタイプが発表され、ようやくその全体像が明らかになったGoogleHealth(コードネーム”Weaver”)だが、その開発責任者でバイスプレジデントのアダム・ボスワース氏がGoogleを去ることがわかった。
Googleの発表によれば、現在、ボスワース氏はバケーション中だが、他のビジネス機会にチャレンジすることを決断したとのこと。正式な後任が決定するまで、やはりバイスプレジデントであるマリッサ・メイヤー氏がGoogleHealthチームを引き継ぐことになる。
GoogleHealthは2004年からGoogleが取り組んできたプロジェクトだが、昨年早々、このプロジェクトのアーキテクトにアダム・ボスワース氏が就任して以来、にわかに注目を集めるようになった。ボスワース氏はこれまでマイクロソフト社在籍時代には「アクセス」と「IE」、ボーランド社在籍時代には「クアトロ」とヒット商品開発の実績を持ち、そこに期待が集まったわけだ。さらにXML開発の中心人物でもある。
だが当方も、このニュースを目にした時、にわかには信じられなかった。昨年暮れから今年春にかけて、アダム・ボスワース氏はさまざまな医療関係コンファレンスなどの機会をとらえ、特に消費者視点で今日の医療情報利用をめぐる問題を熱く語っていたからだ。次世代ウェブ医療サービス開発の「最強エンジン」が、まさにアダム・ボスワース氏その人であったからだ。
アダム・ボスワース氏の降板によって、GoogleHealthはきわめて視界不良な前途を余儀なくされてしまった。今回の事態の真相はまだ闇の中にある。ただ、医療におけるIT化が容易ではないということも、改めて認識させられた。
GoogleHealthの場合、システム自体は難なく完成されるとしても、たとえば個人医療情報を医療機関やペイヤーをはじめ様々なプレイヤーからスムースに集めるという問題など、未解決な問題が山積していた。Googleが単独で解決できる技術的な問題よりも、多数のプレイヤーが蝟集する医療業界内部の関係調整のほうが厄介なのかもしれない。
三宅 啓 INITIATIVE INC.