米国Health2.0はバブル段階に来たのか?

Rock Report: State of Digital Health

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現在、米国ではHealth2.0をふくめ医療ITシーン全体がこれまでにない活況を呈しているようだ。明日、東京で開催されるHealth2.0 Tokyo Chapterでもこのことは報告されるだろうが、最近、米国のHealth2.0関連のブログやニュースサイトから毎日のように聞こえてくるのは景気の良い話ばかりで、「ホンマかいな?」と我が耳を疑うほどである。米国のHealth2.0シーンは、ついに「バブル段階」に来たのだろうか。

まず、医療システムの効率化とコストダウンを目指し、米国政府が大規模資金を医療IT市場に投じ、医療におけるイノベーション促進を加速していることが背景にあるが、この動きに合わせるように、今年に入ってベンチャー・キャピタルも医療IT関連のスタートアップ企業(ベンチャー企業)にこれまでにない投資を加速している。さらにこれらに刺激され、スタートアップ企業の関心が医療分野に集まり、起業件数も大幅に増加。このような好循環がシーン全体に活気を与えている。他分野と比べると規模はまだまだ小さいかも知れないが、これまでの医療ITの停滞ぶりを考えるとこれはもう「バブル」と呼べるかもしれない。

これらHealth2.0のベンチャー企業とベンチャーキャピタルの動向を要領よくまとめ上げたレポートが公開された。「デジタル医療分野におけるサンフランシスコのシード・アクセラレータ」を自称する「Rock Health」が発表したスライド「State of Digital Health」(上図)である。

これを見ると、アーリー・ステージにある110社の資金調達状況では、84%が自己資金、13%がエンジェル・ファンド、そしてわずか2%がベンチャー・キャピタルからとなっており、60%が5万ドル以下の資金で起業している。また、起業する上で困難な障害の第一位は「資金調達」となっている。

さらに「(医療IT分野で)起業した動機」では「この世界を、より健康な場所にしたいから」との回答が一位、「一人の消費者として(医療が)壊れたシステムに見えたので、これを修復したい」が二位、「自分が見たところ、医療IT分野にはイノベーターがいない。退屈なんだ。」が三位になっている。興味深い。

当方も同じ立場であるから、これらHealth2.0スタートアップ企業の声には共感するところが多い。それでも米国ではスタートアップ支援体制が整い始め、VCもこの分野に投資し始めたからまだいいが、日本の場合、依然として起業状況は厳しい。これまで何回も繰り返してきたが、とにかく参入プレイヤーが多数出現しないことには、日本のHealth2.0の実体は無いに等しい。米国とは雲泥の差がある。日本のベンチャー・キャピタルも、Health2.0にもっと注目してもらいたいものである。

ところで、今回のサンフランシスコのHealth2.0カンファレンスのレビューを一覧して感じられたのは、これはいささか早過ぎるかも知れないが「世代交代」ということである。たとえば、一方で新顔スタートアップが多数出現しているのに対し、Health2.0ムーブメント初期に一世を風靡した医師SNS「Sermo」に元気が無い。最近のデータを見ていると、会員ユーザーのSermo離れが起きている気配もある。Facebookに負けているのかも知れない。

これはあくまでも当方の仮説にすぎないが、今後、Sermoのようなクローズドなシングル・イシュー・コミュニティというものは、同業コンペティターとではなく、外部に存在するジェネラル・イシューな大規模ソーシャルメディアとの闘いを強いられるのかも知れない。たとえばFacebookやTwitterで、もしも必要な情報収集や意見交換が済んでしまうのなら、Sermoをわざわざ訪問する回数は減るだろう。「時間」という有限資源の奪い合いになるだろう。一般的に人が大規模ソーシャルメディアで過ごす時間は増えてきている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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