先週、12月4日付けのBusinessWeekの記事「Health 2.0: Patients as Partners」 で、かなり大きくHealth2.0が取り上げられた。Health2.0はすでにニッチなトレンドではなく、社会的な広がりと小さくない影響力を持つムーブメントとして認知されつつあることを、この記事は物語っているだろう。記事のクオリティも高いので、Health2.0に関心を持つ者は必見である。
ところで、スコット・シュリーブがブログエントリ「Short Selling: Why the Long View is Critical for Health 2.0」 でこの記事を批判をしている。BusinessWeek記事が、SNSだけに焦点を絞ってHealth2.0を語っていることに対する、彼独特の苛立ちがこのエントリを読んでわかった。そう言えば、この「定義」関連の問題をめぐって、二年前から様々な論客とスコット・シュリーブとの間で論争があったことが思い出される。
これらHealth2.0定義論争をきわめてシンプルに要約すれば、Health2.0を包括的かつ長期的な医療改革ムーブメントとして見るか、それとも医療コミュニケーション分野に単にweb2.0技術を使うだけの限定的なムーブメントとして見るか、という違いをめぐる論争であった。スコット・シュリーブは一貫して包括的かつ長期的な医療改革ムーブメントとしてのHealth2.0を主張し、またそのための理論的かつ実践的な考察を進めてきたのである。このようなスコット・シュリーブの観点からすれば、SNSだけを取り上げてHealth2.0を論じるようなBusinessWeekのやりかたを座視できなかったはずだ
私にとって、Health2.0の急成長はまったく新しい医療システムへの移行であり、そこではまったく新しいタイプの関係が可能となるのである。それらは患者と医療提供者との、患者と彼らの医療データとの、患者と保険会社との、そして患者と彼らの主治医との間の関係である。(スコット・シュリーブのブログエントリより)
このようにスコット・シュリーブは単なる「web2.0の医療版」としてではなく、すべての医療分野の関係者とシステムのあり方を変えるような、そんな包括的な改革ムーブメントとしてHealth2.0を捉えている。実はこのあたりは、Health2.0コンファレンス主催者であるマシュー・ホルトなどともかなりの温度差がある。
スコット・シュリーブに多くを教えられたこともあり、当方などはやはり包括的な医療改革ムーブメントしてHealth2.0をとらえたい。そして加えて言えば、医療という専門知識分野における「知の革新ムーブメント」という側面を、Health2.0は持っているのではないかと考えている。「伽藍的な啓蒙知」としての従来の医療の知のあり方を、「バザール的な集合知」の活用へと変えていくような、そんな側面があると感じており、それは従来の医療を根底から変える可能性を持っていると考えている。そこに実は強くひかれているのだ。
三宅 啓 INITIATIVE INC.
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