12月の雨の日

水の匂いが眩しい通りに
雨に憑かれた人が行き交う
雨上がりの街に風がふいに起こる
流れる人波をぼくは見ている
(はっぴいえんど「12月の雨の日」松本隆作詞)

窓ごしに雨の新宿の街を見ていると、ふいに遠い記憶からこの歌が思い出された。師走というあわただしい時が駆け抜ける街で、この歌が描き出すのはむしろ妙に静謐な街の佇まいである。そのきわだった対照ゆえに記憶に残っているのかもしれない。

検索エンジン開発は、いろいろな障害を一つ一つ乗り越えて進行中。なんとか15日には公開したい。当面はこれまでテスト運用してきたものと同様の検索機能になるが、いずれ、もう少し違ったかたちで検索機能を提供することも考えている。闘病ネットワーク圏の可視化の方法については、さまざまに多様な可能性があるからだ。たとえば検索対象を特定の病名闘病サイトだけに絞り可変的に選択できるようにすれば、ユーザーはより一層情報を扱いやすくなるだろう。いずれにせよ、特定ワードを探し出すだけでは不十分だと考えている。

検索エンジンの次に開発するプラットフォームだが、これはビジネスの受け皿としても重要だ。ビジネスモデルとスキームについても、さまざまな人々と協議しはじめている。いろいろな可能性がある。

だが、徐々に「TOBYOらしさ」ということも意識してきている。TOBYOとしてやるべきことと、やってはいけないことがあるはずなのだ。このアイデンティティというものは、もちろん開発者の私たちがすべてコントロールすべきものだが、ひょっとして徐々に私たちの手を離れていくものなのかもしれない。自分たちで作ったブランドなのだが、いずれ社会あるいはパブリックスフィアに手渡すような時があるのかもしれない。どんな企業家も本当はブランドを私有化することはできず、むしろ社会に送り出し、最終的に共有されることを目指すべきなのかも知れない。

そんなことを「12月の雨の日」に考えた。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>