みんな集まってあたりを見回してみろ
周囲の水が嵩を増してくるのがわかるだろう
もうすぐ骨の髄までびしょ濡れさ、わかるだろう
時間を無駄遣いしたくないなら、すぐに泳ぎ出した方がいいぜ
さもないと、石のように沈んでしまう
時代は変わりはじめたから
（「時代は変わる」ボブ・ディラン）

今日も東京は快晴。窓から富士がくっきり見える。久しぶりに広告会社時代の先輩とランチをしながら、あれこれ語り合った。なぜだか先輩は元気がないように見受けられた。思い当たることは一つしかない。広告業界の惨状である。だが、あえてその話題には触れずに、当方のTOBYO進行状況やネット関連の方へ話を向けた。

20世紀の広告業界で生きて来た者の一人として言わせてもらうと、昨今の広告不況は未曾有の規模で進行している。過去に見たこともないようなマイナス数値が、主要各社業績表に並ぶのを目の当たりにして、絶句するしかない。だが、これらの危機的事態にまったく意外感はない。むしろ当然視すらできるということが問題なのだ。

かつて16世紀にヨーロッパで起きた文化革命については、昨年、「一六世紀文化革命」（山本義隆）という素晴らしい本が出た。印刷技術の普及浸透、図像遠近法の成立、ラテン語至上主義から各国国語への言語革命などによって、この文化革命でヨーロッパにおける「知」の景観は一変してしまったのである。今日の近代西洋医学も、この時期に当時の大学を根城とするスコラ哲学から脱却し、床屋医療者による実践的医療技術として一歩を踏み出したのである。

そして今日、16世紀から500年を経て、再び同じような規模で、新しい知と文化の革命が起きつつあると言えるのではないだろうか。それは単に「マスメディアの凋落」といった「小さな事件」だけではなく、「16世紀からのこの500年間」が終わってしまうような、そんな規模の地殻変動ではないのか。

時代は変わる。

三宅　啓　　INITIATIVE INC.

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