昨日のエントリで触れた、4月25日開催「医療職スタッフトレーニングプログラム」でのHealth2.0プレゼンテーションだが、講演されたメディカルオブリージュの石見さんのブログに、プレゼン・スライドと解説がポストされた。
Health 2.0とは、自分なりの捉え方では「患者が本来自分たちのものである情報を自分の手に取り戻し、その情報を基に自分の納得する医療を受けられる状態になること」だと思っており、そのキーがテクノロジーとしてのPortabilty(=Personal Health Record)なのだろうと考えています。
以上のように石見さんは述べられているが、手際よくHealth2.0の核心部分を要約されておられると思った。また、このことを「パラダイム・シフト」という言葉で説明されてもおられる。「Web2.0は、一人ひとりの個人をエンパワーする」ということは様々に指摘されてきたのだが、医療と健康の分野でこのことがどのように発現するかと考えた時に、まず、石見さんが上記に要約指摘されたことが起きるのだと思う。端的に言って、今日、患者一人ひとりの情報力が格段に強化されてきているのであるから、従来、主として医療者と患者の間における「情報の非対称性」によって辛うじて成立していたパターナリズムや「コマンド&コントロール」型コミュニケーションは、その根拠を既に失いつつあるのだ。このことを「パラダイム・シフト」あるいは「パワーシフト」と言ってもよいだろう。
今までも患者中心の医療、というのは実際に活動として日本にもあったし、Health 2.0と名前をつけることで何が違うのか??その答えが無いといけません。「最近の流れでしょ?」とか「web 2.0のパクリでしょ」では、ブームで終わってしまいます。
このキーワードに響いている多くの人には、これはブームでなく、パラダイムシフトである、との認識があると思いますが、それを明確に定義する必要があるのです。
たしかに石見さんが言われるように、Health2.0の定義は、今の時点では一様ではなく、不明確であるとさえ言えよう。スコット・シュリーブらによる定義の労作はあるのだが、今後、さらに犀利な定義が求められよう。だが、定義の完成度よりももっと重要なことは、このムーブメントが何を実際に生み出すのかということだ、と当方は考えたりもしている。
また、石見さんは「ブーム」という言葉で指摘されているが、かつて10年ほど前、インターネットが大きく成長し始めた時、医療と健康の分野では「eヘルス革命」などと言われた「ブーム」があったことを思い出す。そこでも、やはり「情報の非対称」の問題が指摘され、パターナリズムをはじめ医療と患者の関係が変化すると言われていた。だが、結局、この「eヘルス」はナッシングに終わった。何も起きなかったわけである。
かつての「eヘルス」の轍を踏まないためには、一体、何が必要なのかとよく考えるときがある。石見さんは「構成メンバー」の問題を提起されておられるが、ここは大きなポイントだと当方も思う。できうれば、実際に何かを作り、生み出すメンバーが主体になり、実践的なベクトルをもつムーブメントであるべきだとも思う。
それはともかくとして、石見さんお疲れさまでした。また、当方のTOBYOをご紹介いただき、まことにありがとうございました。
三宅 啓 INITIATIVE INC.