今秋9月20日、サンフランシスコで開催される「Health2.0カンファレンス」の概要が決定した。タイトルは「ユーザー生成医療」(User-Generated Healthcare)。以下はパンフレットからの抜粋。
「ソーシャルメディア、ブログ、wiki、ポッドキャスト、UGV、そして特化型検索などWeb2.0ツールを採用することによって、これまでペイヤー、医師、医療機関、そして医療サプライヤーたちによって定義された伝統的な情報フローから、根本的なシフトが急速に起きているのである。より良い情報とより簡単な体験共有の方法への、消費者と医療提供者の需要の大きなシフトのスタート地点にわれわれが立っていることは、間違いなく明白なことである。」
「すべての医療関係者は、いかにしてこれら新しい技術やネットワークと関係を持つか、そしていかにして、場合によっては自分たちのビジネスや技術戦略にそれらを導入し統合するかの決定に、ただちに取り組み始めなければならない。新興のHealth2.0現象が、独立した産業セクターに成長していくのか、現在のヘルスケア・システムに組み込まれるのか、あるいは新しいハイブリッドな展望を創造するのかは、まだ明白ではない。」
Health2.0カンファランスの概要
主催者であるマシュー・ホルト氏によれば、このカンファランスはHealth2.0の想定された四つのカテゴリーから組み立てられているようだ。
1.サーチ
2.患者向けソーシャルメディア
3.患者・消費者のツール
4.医療提供者のソーシャル・ネットワーキング
カンファレンスでは上記四カテゴリーに対応するパネルが用意されているほか、オープニングパネルをはじめ3つのスペシャルパネルが組まれている。オープニングパネル「消費者アグリゲーターの役割」ではGoogleのVPアダム・ボスワース氏、マイクロソフトのヘルスケア・ディレクターのビル・クラウンス氏、Yahooヘルスのディレクターであるボニー・ベッカー氏、WebMDのVPアン・モンド・ジョンソン氏など錚々たるメンバーが出席する。
他の各パネルの出席者を見ても、主要な医療業界プレイヤーとITプレイヤーが総結集。よくもこれだけのメンバーを集めることができたものだと感心させられるが、これも、いかにHealth2.0が現在米国で注目されているかを、如実に語るものだと思う。
“eヘルス”(Health1.0)からHealth2.0へ
10年前、”eヘルス”という呼称があったが、日本では結局定着しないまま消えてしまった。と言うより、「定着する、しない」の問題ではなく、”eヘルス”という言葉だけが出されただけで実体が何もついてこなかった、と言うほうが正しいだろう。米国でも同じような結果である。いわば中身のない、評論家の「流行り言葉」(バズ・ワーズ)で終わってしまった。
これに対しHealth2.0はどうだろうか。”eヘルス”の轍を踏まずにタンジブルなムーブメントになるのだろうか?。それは今後の推移を見るしかないが、当方は実践家であって評論家ではないので、「見守る」のではなく「実行」していくつもりである。
では、昔の”eヘルス”と現在のHealth2.0はどこがどう違うのか?。これは、今後、少しづつこのブログで明らかにしたいが、まず「その中身が違う」ということを指摘しておきたい。
かつての”eヘルス”では、その中身として「コンテンツ、コマース、コミュニケーション・・・・」などのカテゴリーを想定していたようだ。だが、上記のHealth2.0の4つのカテゴリーを見ても、これら”eヘルス”のカテゴリーと重なるものは何一つない。やはりweb2.0から直接のインパクトを受けて登場してきたHealth2.0は、「サービス」という面を重視している。
やや乱暴に要約してしまえば「パッケージコンテンツを制作し、フローし、コマースする」ことがweb1.0であり、その医療版である”eヘルス”であった。これに対しHealth2.0は、「サービスとしてのアプリでありツールである」という視点をWeb2.0から継承している。だが実は、それだけではない。Health2.0は単なる新技術のカタログではない。それについては後日。
photo by Laertes
三宅 啓 INITIATIVE INC.