先月開催された「web2.0サミット2007」だが、”Discovering the Web Edge”と掲げられたそのタイトルにもかかわらず、これという斬新なニュースが少なく、「結局、FacebookとiPhoneの話題しかなかった」とまで評されている。そのFacebookだが、今や注目度では完全にMySpace.comを抜き去り、あっという間にナンバーワンSNSの地位を確立してしまったかの感さえある。ちなみに「comScore World Metrix」によると、2007年9月現在、Facebookは73,521,000ユニークユーザーが利用しており、前年比420%成長しているとのことである。
その理由は、次のように語られている。
FacebookはMySpaceと比較されることが多いが、その違いはページのカスタマイズ性である。MySpaceはHTMLとCSSでのカスタマイズに対応しているが、Facebookではプレーンテキストのみに対応している。 ただし、FacebookはAjaxに対応していたり、自分の好きなアプリケーションを選択して追加できるなど、最新の技術を駆使している。それらアプリケーションもFacebookが開発したものよりも、一般のユーザが開発したものが多い。このように一般ユーザが様々なアプリケーションを開発しFacebookのツールとして公開できるようになったことで、Facebookはそれ自身が持ち備えている性能を超えてサービスを提供できるようになった。(Wikipedia)
つまりFacebook内で利用できるアプリケーションが決め手となって、多くのユーザーを獲得しているわけだが、ではFacebookには医療関係のアプリケーションはあるのだろうか?と調べてみると、以下のようなものがあることがわかった。
医学文献データベースの定番であるMEDLINE関連アプリケーション。ユーザーが発表した学術論文のMEDLINEリストをユーザー・プロファイルに表示することができる。また友人の論文も見ることができる。
●Healia Health Challenge Quiz Game
医療知識をテストする双方向医療クイズゲーム。あなたは「チーフ・オブ・メディシン」になれるか?。
禁煙を助けてくれるアプリケーション。禁煙計画を立案し進捗状況を管理する。毎日、計画どおり禁煙をしていくとご褒美がもらえる。
臓器提供アプリケーション。必要事項を書き入れることで、英国と米国住民は臓器提供者になれる。
以上のように多彩な医療関連アプリケーションが、Facebook内で利用されている。これまでウェブを利用した医療関連サービスといえば、1.0時代の「ポータルサイト」であれ、また2.0時代の「サービスサイト」であれ、いずれにせよ「独立したウェブサイト」を前提として考えることが一般的であった。だが、Facebookに見るように、SNS内の各ユーザーページをプラットフォームとして、そこにユーザーが自由に追加する「カスタマイズ・アイテム」というスタイルの医療アプリケーションがどんどん登場しているのである。
そしてこのことは、SNSをプラットフォームとする新しいサービス提供市場が生まれつつあることを告げているのだ。
まさにここに注目したのが、先週話題になったGoogleの「オープンソーシャル」である。「オープンソーシャル」はそれぞれのSNSの壁を越えて、簡単に共通仕様のSNSアプリケーションを開発できるAPIセットである。現在、日本のミクシイをはじめ、多数のSNSがこのオープンソーシャルにパートナーとして参加を表明している。
しかし、Facebookから見るとオープンソーシャルは脅威である。自SNS内アプリケーションで先行していたアドバンテージが、他SNSの共通仕様アプリケーションの登場によって崩される可能性があるからだ。また、今のところオープンソーシャルは、SNS群を「越境&串刺し」するサービスまでアナウンスしていないが、将来的には、SNSという閉域を「神の視点」からGoogleが透視する布石になるのかもしれない。
二年前、Web2.0がセンセーショナルに登場したころ、”Web Site is DEAD!”というフレーズをあちこちでよく見かけたが、「そのことが、本当に現実になってきたんだ」という感を強くする今日このごろである。
参考:”Top 20 Facebook Applications in Science and Medicine”,”ScienceRoll”
三宅 啓 INITIATIVE INC.