注目される「ヘルスケア・アンバウンド」市場


(Vince Kuraitis氏作成キイノート・プレゼンテーション「ヘルスケア・アンバウンド)

今月半ばサンフランシスコで開催された”Healthcare Unbound Conference”。ドミトリー・クルグリャク氏のコメントは先日のエントリーで紹介したが、その後Health2.0関係のブロゴスフィアでかなり大きな反響を呼んでいる。

「ヘルスケア・アンバウンド」とは、在宅医療を可能とする遠隔モニタリングや遠隔診療の技術の総称である。患者が病院のベッドに縛り付けられることなく、自宅でのびのびと必要な医療を受けられることを目指すもので、特に慢性疾患の予防段階においてDM(ディジーズ・マネジメント)と組み合わせて実施されるようなイメージが提起されている。コンファレンス出席者(主にVince Kuraitis氏)のブログから、ヘルスケア・アンバウンドのポイントを以下にメモっておく。

・「ヘルスケア・アンバウンド」の技術はまだ完全ではないが、技術自身は採用の初期段階にも達していない。現在の市場成長の大きな障壁となっているものとして、以下の三つの要因が考えられるが、コンファレンス出席者の概ね三分の二が3)を挙げていた。

1)技術的問題
2)ユーザ・インターフェイス
3)ビジネスモデル

・EHRに関する関心や楽観論が衰えを見せ始めるのと相まって、PHRに対する関心が増加している。大半の人はNHIN(全国医療ネットワーク)やRHIOの進化について疑わしく思い始めている。

・モバイル・アプリケーションの潜在的能力に対する理解は高まってきている。Qualcommのドン・ジョーンズは、モバイル技術による「24時間365日のプレゼンス」という概念を提起した。この「プレゼンス」という言葉はDM(ディジーズマネジメント)コミュニティにおいて言われる「慢性疾患のDMというものは、後期の治療段階(メディカル・モデル)以上に、その前の行動変化(社会モデル)に関するものである」というスローガンと結び付けることができる。長い間にわたって、われわれは「24時間365日のプレゼンス」なくして、どうやって行動変化を極大化できるだろうか?。たとえば薬服用リマインダーだが、これをPCのデスクトップに置いておいてどうするというのか。薬のリマインダーというものは「今、ここに」なくては用をなさないものだ。

・大手コンピュータ会社は、引き続きヘルスケア・アンバウンド市場に関心を見せている。
“Continua Alliance”は今や120社以上のメンバーを数える。その中にはインテル、フィリップス、シスコ、デル、IBM、ノキア、オラクル、パナソニック、サムスン、シャープ、シーメンスなどが含まれる。

・資金がこの市場に流入し始めている。ベンチャーキャピトルがコンフェレンスに大挙集まってきた。彼らは異口同音に「われわれはこの市場にとても興味がある。投資できる良い会社があれば推薦してほしい」と誰彼かまわず話していた。こんなことは、3年前には思ってもみなかったことだ。

・ヘルスケア・アンバウンドの技術は孤立して存在するものではない。長期間に及ぶヘルスケア・アンバウンド技術の導入は、広範囲のHIT(医療情報技術)の相互運用と技術転移に基づくものだ。医療機関はその導入の早期段階に参加すべきであり、情報は医療機関や患者で共有されなければならない。

・顧客の「体験」こそが決定的に重要である。フォレスターリサーチのリズ・ボームはこのことをうまく要約した。「体験は失敗から成功を見分ける差別化要因なのだ」。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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