Health2.0的思考(3)

health2.0

今朝、ドミトリー・クルーグリャクのブログで「私のパネルは『医療ソーシャルメディアの状況』と題されたもので、いかにまだ我々がそのゲームの初期段階にあるかを示すものでもあった。」と書かれたエントリーに目が止まった。先日開催された「へルスケア・アンバウンド」コンファレンスにおけるHealth2.0関連セッションの感想が記されていた。

「私の感じたところでは、トラディショナルな『医療情報技術業界』は、まだ最近のインターネット技術のインパクトを本当に理解する最初のステージにある」。「聴衆の大半の質問や発言は、消費者が(医療システムを)コントロールするようになった時の環境適応という共通のテーマに集約されているかに思われた」。

「典型的な質問は『あなたが見つけた(医療)情報が正確であると、どうやってわかるのか』というもの。これは「常に正しいのは誰か?」を問うものだが(ヒント:誰でもない)。この種の質問は、実は私が去年、マーケティング関係者に言ってきたことなのだが、今や彼らも同僚のIT技術者より、変化の認識では先を行っているようだ。」

「なぜこんな事を言うかって?。この最近のテクノロジーの波は、Health2.0と呼んでも、Web2.0と呼んでも、あるいはソーシャルメディアと呼んでもよいが、これは技術ではなくて、人々が自己表現し、組織の壁を打ち壊し超え、最終的には現状の医療ビジネスモデルを破壊し再設計することなのだ」。

昨日の当方エントリーでは、医療情報にシックケア情報とへルスケア情報があることを書いたが、問題はその情報がどのような種類であれ、医療では、常に一方通行径路で情報が配信されてきたことだ。ここには患者や生活者が参加する余地はない。

もちろん高度に専門的な知識体系としての医療に、単純に門外漢が関与すればよいわけではない。だが、他の業界におけるマスコラボレーションの進展ぶりを見れば、今後の医療が患者・生活者の参加を得て進むであろうことも、充分に納得できるのである。しかるに、現状はまだこのような方向性が少しも顕在化していないのだ。

ユーザーとコラボレーションを結んでニーズを直接製品化する方向へと、モノ作りは進みはじめた。サービスもまた、ユーザーとのコラホレーションを通じて、よりコーザー志向のものになって行くだろう。これら産業社会全体の進行方向から、医療は取り残されて行くのではないか。

たしかに医療は、他の製品やサービスとは違うだろう。だが、その違いを過度に強調し、聖域視することは、市民社会の常識とのギャップを広げることになるのではないのか。
また、このギャップが医療不信の源泉なのではないのか。

「パブリックスフィアに医療は位置づけられるべきだ」と当方は考えてきた。だがそれは、宇沢弘文氏のように「専門家集団による医療政策決定」を唱えることではない。このような主張は、医療のパターナリズム(家父長主義)を固定化し、プロフェッショナルフリーダムの容認へとつながってしまうものだ。患者・生活者の参加とは逆行する発想だ。

クルーグリャクのブログを読みながら、そんな事を考えた。

< 関連情報>

Health2.0的思考(2)

三宅 啓 INITIATIVE INC.


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