Revolution Health、今週発進!

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昨日(4月16日)のニューヨークタイムズ紙は、今週木曜日にRevolutionHealth.comがいよいよサイトオープンすると報じている。

巨大投資と著名経営メンバー

当ブログでもRevolutionHealthの概要は既にレポートしているが、約5億ドルというWeb医療サービスとしては破格の投資総額や、AOLの創設者ケース氏を筆頭に、フィオリーナ前ヒューレットパッカードCEOやコリン・パウエル前国務長官など、著名人が経営メンバーに名を連ねていることなどが早くから話題を呼んでいる。

パウエル前国務長官が広告塔?

フィオリーナ氏のほかに、ファニメイの元経営者であったフランクリン・D・レインズ、そしてオックスフォード・ヘルスプランの前経営者であるステファン・F・ウィギンズなど、「前」あるいは「元」経営者が参画しているが、ニューヨークタイムズは「彼らの中には、離職の途上、企業内紛争の真っ只中で気前の良い報酬を得た者もいる」と皮肉り、「たぶん(この経営メンバーの中で)もっとも良く知られ、もっとも異論が少ないメンバーはパウエル氏だろう」としている。ブッシュ政権の前国務長官パウエル氏は、たびたび講演会のスピーチなどでRevolutionHealthの話題を取り上げ、RevolutionHealthの存在を広く知らしめるのに一役買っているようだ。広告塔としてはこれ以上ない人選だろう。

RevolutionHealthの野望

AOL(アメリカオンライン)の創立者ケース氏は、AOLとタイム-ワーナーの合併をたまたま目撃したあと同社を離れ、その二年後にRevolutionHealthを設立した。医療市場ではブランド構築の機が熟したとケース氏は見ている。「エスプレッソにおけるスターバックス、フィットネスにおけるナイキ」と同じくらい強力な医療ブランドを構築するために、これまでにケース氏は1億ドル以上の私財をRevolutionHealthに投じてきた。

しかしWeb医療サービス分野には先行者が存在する。総合医療ポータルのWebMD、
総合ポータルYahooHealth、医療機関ポータルMayoClinic.com、そしてニューヨークタイムズが保有するAbout.com Healthなどである。

その中で間違いなく最大のものは、近年証券市場で人気の高いWebMDであり、月間訪問ユニークユーザー数4000万人以上を数える 。ケース氏は「WebMDがリードしており良い仕事をしている」ことを認めつつも、RevolutionHealthは、ユーザーが生活を管理するために頻繁に利用するようなサイトにしたいと抱負を述べている。

これはたとえば、保険金をめぐる生命保険会社とのトラブルを解決するようなサービスであるが、実際には、徐々に、一般消費者ユーザーから雇用者など法人ユーザーへとターゲットを移動しているようだ。

広告によるビジネスモデル

RevolutionHealthは無料の医療情報サービスを提供し、そのビジネスモデルは広告収入に依存する。Googleに代表されるように、Web2.0系のサービスは「広告収益による無料サービス」というビジネスモデルが一般的となった。だが一方ではケース氏は、特に製薬会社の社会的イメージの悪さを気にしているようで、広告を前面に出し露出することには消極的だとも言う。

Web医療サービスの最大の広告主は製薬会社であり、昨年、Webマーケティングに約4億5千5百万ドルを投下している。しかしこれは、製薬業界全体の全広告費130億ドルのわずか3.5%に過ぎない。同じく広告を収益源とするWebMDのワイゴッド会長は、「われわれの主要な競争相手はテレビである」と言う。

提供サービスと問題点

RevolutionHealthが提供するサービスは、全方位型の総合医療ポータル・サービスである。先行するWebMDなどが提供するサービスを、これらはほぼ網羅しているが、巨大投資によって情報量・質共に先行者を凌駕する勢いである。

だがいくつか問題も指摘されている。調査会社ガートナーの医療アナリストであるウェス・リッチェルは「PHRに問題がある」と言う。他の先行会社や保険会社と同じく、RevolutionHealthもPHRを売り物の一つにしているが、やはり多くの医療機関に散在する個人医療情報を、どのように一箇所に集約するかの問題にまだはっきりした解決策がない。

「PHRの本当の問題は、医療機関がそのデータを提供したくないというところにある」とリッチェル氏は言う

ともあれ、Web史上最大の医療ポータルサイトRevolutionHealthは今週発進する。先行する競合をねじ伏せて、ケース氏が言う「最強ブランド」の地位を築くことが出来るかどうか、状況はまったく予断を許さない。

日本円にして500億円-600億円という投資総額のこの事業。まだ細部はこれから調べなければならないとしても、どうもこの事業はWeb1.0的な発想が強いように思える。巨大爬虫類(ドットコッム企業)が跋扈する時代は、すでに終わったはずなのだが・・・・。Googleの動きも含め、今後のWeb医療サービスに注目したい。

Source: The New York Times
三宅 啓  INITIATIVE INC.


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