闘病記ライブラリー
闘病記、それもどちらかというと「リアル」、つまり書籍として出版された闘病記に対する関心は高まっています。たとえば、図書館司書、患者会、研究者、ジャーナリスト等によって2004年に結成された「健康情報棚プロジェクト」は、国内で出版された闘病記を収集、分類し、データベース化する活動をおこなっています。整理した情報をもとに、「闘病記文庫」を全国各地の図書館や病院に設置。さらに、Web上に「闘病記ライブラリー」サイトを開設し、全国どこからでも、書籍の闘病記検索がおこなえるようになっています。
この「健康情報棚プロジェクト」の和田恵美子氏(大阪府立大学看護学部)によれば、闘病記について、「これらは、『家庭の医学書』や健康雑誌などの一般書と,医学論文・専門書の間に位置し、患者が抱く病気の不確実性(uncertainly)による不安に対し、重要な情報になると考えられる。」 (「「闘病記文庫」は患者・医療者に何をもたらすか」)と述べられています。
闘病記=UGC
以上は、書籍として出版された闘病記の話ですが、私たちはWeb上の闘病記を、UGCとして積極的に評価しようと考えています。UGCとはユーザーが、Webへ自発的に発信するコンテンツのことで、User Generated Contentsの略です。これはCGC(Consumer Generated Contents)とか、UCC(User Created Contents) とか言われることもあります。
これまでも触れてきたように、今日、「特定少数のマスメディア、権威、専門家、組織」だけが、特権的に「コマンド&コントロール」の発想で、一方的に情報配信してきた時代は終わりつつあります。「You」が主人公となり、情報のコントロール権はユーザーの手に移ろうとしているのです。このような時代において、患者を含む闘病者、生活者が発信するUGCとして、Web闘病記を積極的に評価すべきだと考えています。
その意味からすると、上記論文中にあるような、「『家庭の医学書』や健康雑誌などの一般書と、医学論文・専門書の間に位置する」という消極的で中間的な位置および性格としてではなく、その独自な存在意義を、積極的に認めていくべきだろうと考えます。
三宅 啓 INITIATIVE INC.