オープン・ヘルスケア宣言(3):旧い基準を越えて行く 

「オープン・ヘルスケア宣言」の背景に、ソーシャルメディアの台頭があったことを昨日のエントリーでまとめてみました。初期のインターネット、いわゆるWeb1.0の時代においても「コマンド&コントロール」の発想は支配的であり、その時代に作られたHONコードなど医療Webサイト基準も色濃くその発想を持っていました。

HONコード・ファウンデーション、インターネット医療連合(IHC)そしてURACなど、初期インターネット時代の健康情報基準は、インターネット健康情報の整合性あるセイフガードを創り出す最初のステップを提供し、これまで引き続き適切であり続けた。しかし彼らは、「コマンド&コントロール」コミュニケーションや、組織から個人へ向かうトップダウン・コミュニケーションに適応することを主に目指したのである。彼らは、健康情報や意見がオープンにピア・トゥ・ピアで交換されることによって生じる肯定的な機会と潜在的な脅威の存在を、充分に理解せず、広めず、対応できないでいる。(「宣言」序文:What about existing eHealth standards?)

Web1.0時代には、医療情報発信の主なプレーヤーは病院、行政、大学、学会、製薬業界など特定少数であり、この顔ぶれはインターネット以前の伝統的メディアの時代とさして変わりはありませんでした。HONをはじめ当時成立した医療情報の配信基準も、これら特定少数の情報発信源を想定すれば事足りていたわけです。しかし、ソーシャルメディアの爆発的増大という予期せぬ事態を前に、旧来の諸基準は充分対応できなくなっています。

このマニフェストのゴールは、これら初期の基準を補完することにあり、また、オープン・ヘルスメディアの更なる発展のための諸原理を宣言することにある。このマニフェストでわれわれは、草の根キャンペーンをキックオフすることを望んでいる。そしてそれはいつか未来に、一層フォーマルな基準の創造へとたどり着くであろう。(同上)

このように、このマニフェストは何かを取り締まったり、何かの合否を判定したりするものというよりは、現在進行しているソーシャルメディアの医療分野における発展を支援する意志をもっているといえます。当然ながら、法的基準を民間が作るわけにはいきませんから、それはソーシャルメディアの担い手が自発的に守るべきルールということになります。この基準を運用する「専門家」も、この基準の達成レベルの「認証」なども、本来無縁であるべきものです。

ルールや基準が一人歩きし、あたかもそれ自体が独自の価値を有するように偽装・幻想され、その周囲にそれらを司る「専門家」が出現し、やがて何らかの資格が生じ有料コンサル業務まで成立する・・・・・。これがこれまでの、さまざまな「基準」の運命でした。仄聞するところに寄れば、たとえば医療機能評価機構の審査・認定を取得するためのコンサル業務まで、すでに存在するとのコトです。

オープン・ヘルスケア宣言はこれらの旧い基準を超えて行ってほしいと思います。

三宅 啓   INITIATIVE INC.


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