変化を集約するHealth2.0

昨日のエントリーで、Health2.0に関連する議論を概観した。Health2.0にせよPPHにせよ、まだ生まれて間もないムーブメントであるから、今の時点で、その成否を論じることは出来ない。まだようやく始まったばかりなのである。意見の対立が目に付いてきたが、それを乗り越えて一層大きなムーブメントへと成長してほしい。

昨日は、特にHealth2.0の対象領域をめぐる対立、つまり「対象限定派 対 対象拡大派」の問題があることを指摘したが、これはある種、現実論(限定派)と理想論(拡大派)という図式に置き換えて見ることができよう。もちろん、これらの内部対立をスキャンダルとして騒ぎ立てる必要はない。どのようなムーブメントにも意見対立はつき物である。2.0の定義など、今後に注目していきたいが、Web2.0のティム・オライリー氏の「定義」のように、結局、さまざまな重層的な「変化」を明らかにし、その変化の集合をとりあえず「2.0」と名づけておこう、というようなラフなことになるのではないか。それでよいような気がする。

それとHealth2.0の定義を考えるなら、それ以前のいわゆる「e-ヘルス」などと言われたWeb1.0関連の動きとの違いを、対比的に考えておきたい。これは一昨日のエントリーでも一部触れておいたが、たとえば次のように整理がつくだろう。二年前のオライリー氏の対比図に、おのずから似てくるのだが・・・・・・・。
1.0-2.0

上図に見るように、やはり基本的には「Web1.0→Web2.0」という流れに対応する形で、いろいろな変化が生じた結果、Health2.0が出現したということである。特に戦略シフトと言う点では、「コマンド&コントロール」(命令と統制)から「エンゲージ&エンカレッジ」(働きかけと促進)へと、大きく戦略焦点が変わった。これはソーシャルメディアの数と影響力の増加によって、情報の送り手が、1.0時代のようには充分にメッセージ配信を一元的に統御できなくなりつつあることを示している。

Webの活動主体をみても、医療業界プレイヤーから患者・生活者など、個人へとパワーシフトが起きた。それによりWebMDのような巨大ポータルから、個人が活動するソーシャルメディアへと主要サイトのスタイルも変化した。米国では糖尿病患者が主催する個人サイト(Diabetes Mine)が、大手ポータルを凌ぐ影響力さえ持つようになってきている。

また1.0(e-Health)時代には、「医療情報の信頼性を確保する」との理由で、サイト掲出基準、倫理コード、サイト審査認定などの各種ルールや「お墨付き」が必要とされた。だがこれらは、実は当時の「コマンド&コントロール」戦略を担保するための方策であるに過ぎなかった。有効に「コマンド&コントロール」が機能するためには、名目上の「もっともらしさ」が必要であった。だが2.0では、その有効性と意味は消失してしまったのである。現在、それら基準やルールが、常識的で一般的な基準以上のものを提示できないのはそのためである。形骸化したHONやURACに代わって、必要なプリンシプルだけをシンプルにまとめたのが”Open Healthcare Manifesto”である。

そしてWebは、大組織が大きな資金を動かして「コンテンツを配信する」ものから、患者、生活者などユーザーが参加し発言するものへと大きく姿を変えたのである。一言で言えば、個人のエンパワーメントがおきているのである。これらの変化を認識するところからHealth2.0は始まっている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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