「処方箋薬を安く買いたい」という消費者のために、米国で新しいサービスが登場。BidRxは処方箋薬のネット・オークションを開き、最安値で薬を買うことができるサービスである。
処方箋薬価格を可視化
「今日の医療の一番大きな問題は、それが現実の市場として機能していないということだ。」と、このサイトを主催する有限会社BidRxの販売・マーケティング担当VPであるケレンバーガー氏は言う。「消費者は本当のコストを知らされていない。彼らはどんなオプションが利用でき、それを誰が提供しているかを見つけることができない。たとえば車を買うとしたら、まさか目隠しをしてカーディーラーのところへ行くわけないだろう。でも残念ながら現時点では、医療プロセスはそんなものなんだよ。」
BidRxは消費者のこのような状態を変えることを目指している。ユーザーはBidRxを次のようなステップで利用する。
1. BidRxで自分のユーザー・アカウントを作る
2. 医療機関で処方箋をもらう
3. BidRxサイトへ行き、パーソナルアカウントのページに処方箋に記された薬の名前、強度、用量などを入力
4. そのデータをもとにBidRxはオークションを開く
5. 全国の登録薬局が入札に参加できる
6. ユーザーは入札価格で薬局を選択
7. 処方箋を「直接持参、郵送、ファックス」のいずれかで薬局に送付して発注成立。
ユーザーは無料でこのサービスを利用できる。一方、薬局はBidRxと契約を結び、オークションの入札手数料を徴収されるようだ。
このサービスのユーザーであるブローダリック夫妻の話。「夫がクローン病で、私達は毎月たくさんの出費をしています」。薬品「ブデソニド」の処方箋を貰ったとき、妻のローラはBidRxで価格比較しようと決心した。その結果、三つの薬局から入札された価格には最大で120ドルもの差があったという。
処方箋薬オークションの可能性
「Web1.0は、コマースが強調されすぎた時代だった」という指摘もあるが、考えて見ると医療分野のWeb1.0つまりe-Healthの時代、’90年代半ば、最初に大量に立ち上がったのは薬局のディスカウント・サイトであった。だがしばらくして、これら乱立した薬局サイトのほとんどは姿を消してしまった。その理由をマーケティング関連の書籍を読むと、「消費者が、自分や家族の健康状態をよく知っている近所の顔見知りの薬局のほうを信頼し、選択したからである」などと説明している。
だが、これらディスカウントサイトはOTC(市販薬品)を中心に販売しており、オークション方式というユニークな仕組みも持っていなかった。その意味でこのBidRxの今後が注目される。
日本ではどうだろうか?。日本で処方箋薬は公定価格なので、薬価に大きな差はないはずだ。ただジェネリック品と正規ブランド品の価格差はある。だが、オークションということになると、一気に日本での実現は難しくなりそうだ。法的な規制問題があるだろうし、また、薬局など「業界団体」が黙ってはいないだろう。
BidRxが成功するかどうかはわからないが、少なくとも新しいアイデアで、新しいユーザー・ベネフィットを提供しようとチャレンジしていることに拍手。日本医療ではこのような新しいアイデアを、ベンチャーがどんどん作れる自由度もスペースもないのである。これではベンチャーも、消費者も、両方が「不幸な国」なのだ。
Source: the May 23, 2007 Milwaukee Journal Sentinel
三宅 啓 INITIATIVE INC.