患者と医師のWeb医療情報共有状況

患者がWebで検索して見つけ出した医療情報は、その後、どのように処理されているのだろうか。医師にその情報を話し、詳しい説明を求めたり、その情報をもとに治療方針を相談したりしているのだろうか。それとも、医師には黙っているのだろうか。逆に、医師は患者からWebの医療情報を示されたとき、どのような反応をしているのだろうか?。
患者学習の一環としてそのことを肯定的に是認しているのだろうか。それとも苦々しく、煩わしく思っているのだろうか?。

患者-医師関係と医療情報

Web医療情報そのものについては、これまでもさまざまに論じらてきたが、ではその医療情報が患者と医師の間でどのように扱われているか、さらに医療情報は患者-医師関係にどのような影響を与えるかなどは、これまであまり議論されてこなかったと思う。結局これは、患者-医師関係を心理的ファクターやヒューマンファクターの機微まで含めて見つめなおしていく作業になるかもしれない。このことについてはエントリーを改めて考えたい。

今回、米国でこの実態の一端を明らかにする調査がジュピター・リサーチ社によって実施された。

Web医療情報ユーザーの62%が医師と情報を共有

まず、Web医療情報を利用するユーザーの62%が、Webで見つけた医療情報について医師と話し合い共有していると回答。10%のWeb医療情報ユーザーは、「医師を困らせるかもしれないから」との理由で、見つけた情報について触れていなかった。また、4%のユーザーは、「医師との信頼関係を壊すかもしれない」との理由で触れていない。医師との関係を理由に、情報について触れなかったユーザーは合わせて14%になった。

どのようにWeb医療情報を共有しているか

Web医療情報を医師と共有するユーザーに対し、ではどのように共有しているか、どのように医療情報を使っているかを訊くと、次のグラフのような結果が出た。
HowToUse
Web医療情報を医師と共有しているユーザーのうち56%は、彼ら自身の症状を説明する助けとしてネWeb医療情報を利用していると答えた。48%は、彼らが見つけた情報が正確かどうかを医師と話し合っていた。41%は診断結果を話し合うためにWeb医療情報を使っていた。21%のユーザーは、特別な薬剤を医師に頼むときに、見つけたWeb医療情報を利用していた。18%は特別な治療を頼むときである。

また、回答者のうち52%が、彼らの医師は患者がWebで見つけた医療情報について、質問に答えてくれると回答している。38%は、彼らの医師は彼らが見つけた情報を検討材料にしてくれると答えている。だが、回答者の5%は、彼らの医師は困惑しているように見えたと言い、3%が、医師は彼らの情報を無視したと答えた。そして、医師とWeb医療情報について話し合ったユーザーのうち、医師からその情報ソースを尋ねられたユーザーはわずか9%であった。

以上が調査結果概要である。ずいぶん前から医療者と患者の「情報の非対称性」などと言われてきたが、Web上の医療情報が拡充されるにつれ、これも徐々に「対称性」へと近づいていることは間違いないだろう。最新の、おまけにかなり専門性の高い医療情報まで、患者は容易にアクセスすることができるようになってきている。

だが、そのような「患者の情報武装化」は「患者-医師」関係に微妙な変化をもたらしており、そこをどのように考えるかは、まだ明確ではない。

調査時期:2007年4月
回答者:米国Web医療情報ユーザー915人
調査実施機関:ジュピターリサーチ

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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