オープン・ヘルスケア宣言(2): ソーシャルメディアの登場

MassSocialMedia

昨年10月末に発表された「オープン・ヘルスケア宣言」登場の背景として、ソーシャルメディアの登場がまず挙げられるでしょう。上図は、Web2.0の優れたビジョナリーであるディオン・ヒンチクリフが、自己のブログで先日発表したものです。ソーシャルメディアという言葉は、昨年あたりから米国で盛んに使われ始めたと記憶していますが、Wilipediaで定義を見ると、

「人々が意見、洞察、体験そして考え方をお互いで共有するのに使うツールやプラットフォームのこと。ソーシャルメディアはテキスト、イメージ、オーディオ、 そしてビデオを含むたくさんの違う種類の情報を扱うことができる。人気のあるソーシャルメディアにはブログ、メッセージボード、ポッドキャスト、 Wiki、そしてビデオブログが含まれる。」

とあります。この定義を手がかりに上図を見ると、従来の伝統的メディアとソーシャルメディアの関係が一目で理解できますが、ディオン・ヒンチクリフはさらに次のようなソーシャルメディアの基本ルール定義を試みています。

1.モノローグではない会話形式のコミュニケーション
2.ソーシャルメディアの参加者は人々であり、組織ではない。
3. 誠実さと透明性がコアバリューである。
4.要はPullであり、Pushではない
5.中心化に代わりディストリビューションである。

「会話形式のコミュニケーション」というあたり、「Cluetrain Manifesto」の考え方と近いものがあります。では、これらソーシャルメディアの登場によって何が起きたかというと、上図右側の矢印で変化が示されているように、「組織のコントロール」が「消費者のコントロール」へとシフトしたと説明されます。従来、企業や団体が伝統的なマスメディアを使って、一方的かつ大量に情報を消費者へ”Push”するという情報のコントロール権は、ソーシャルメディアの登場によって相対的にパワーダウンし、むしろ消費者個人が発信する情報総体のほうが社会的影響力は高まってきたといわれるようになりました。

Engage and Encourage

これらの情報社会の構造変化によって、たとえばマーケティング、広告、広報のあり方も劇的に変化したといわれています。これをめぐって、今日、徐々にコンセンサスとなりつつある考え方は、「”コマンド&コントロール”から”エンゲージ&エンカレッジ”のマーケティングへ 」というものです。かつては企業がマスメディアを使って、情報内容やそのコミュニケーション効果を、全面的にコマンド(命令)しコントロールできていたわけですが、ソーシャルメディアはそのような「コマンド&コントロール」の力が及ばない消費者駆動型メディアなのです。これまでの「命令と統制」という発想ではなく、むしろソーシャルメディアに積極的にかかわり(エンゲージ)、働きかけていく(エンカレッジ)ことが求められているのです。

医療の世界もまたソーシャルメディアの登場によって、従来の市民、患者、病院、製薬メーカー、保険機構など当事者や関係者のコミュニケーション活動も、本当は大きな影響を受けているはずです。 しかし、他の産業や社会分野と違い、米国でも医療界はその反応や変化のスピードが圧倒的に遅いといわれます。医療エスタブリッシュメントを形成する大病院、大学、学会や製薬業界等は、情報社会の大規模地殻変動にまだ気づかず、相変わらずの「コマンド&コントロール」型コミュニケーション活動にとどまっていると、「宣言」の中で批判的に指摘されています。

これらの医療界の現状に対し、医療ブロガーや先進的な医療者が集まり一石を投じたのが「オープン・ヘルスケア宣言」であったのです。

「オープン・ヘルスメディアの初期の成長は、第一に消費者個人や医療者個人によって、さまざまな利用形態でオンライン配信されながら進行している。しかし、ヘルスメディアの創造と配信における変化の進行について、伝統的組織、プロフェッショナル社会や支援団体の知覚や認知は、まだ著しく欠如している。多くの者が学び適応することを開始した。しかし他はまだ、オープン(ソーシャル)メディアは重要でないと信じており、無視したり、抵抗したりしている。この宣言はオープン(ソーシャル)ヘルスメディアの初期採用者をシンプルな原理の周りに結集させ、その説明と流布を容易にすることを助けるものである。」(序文:What action are you hoping to spur?)

(続く)

(図:Dion Hinchcliffe”Social Media Goes Mainstream”より)

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>