昨日エントリで、災害や感染症のアウトブレーク時にTwitterがライフラインになる可能性などを検討したが、すでに米国CDC(疾病対策予防センター)ではTwitterを使って、新型インフルエンザに関する最新情報を配信している。
8月24日付USA TODAYは“Doctors: A Tweet a day keeps the patients informed”と題し、医療におけるTwitter利用の話題を取り上げているが、「Twitterの医療利用の勧め」として10の利用方法が提唱されている。
- 災害時の警告および対応
- 糖尿病管理(血糖値トラッキング)
- FDA(食品医薬品局)からの薬物安全性警告
- 医療デバイスによるデータ収集とレポーティング
- 看護師や他の医療プロフェッショナルの交代指示
- 診断ブレーンストーミング
- 希少難病のトラッキングとリソースコネクション
- 禁煙支援の提供
- 新米の親に、乳幼児ケアのコツをTwitter配信
- 退院後の患者相談とフォローアップケア
これらを見るといささか不揃いの感もあるが、これからのTwitter医療利用開発のたたきとして十分に使えるだろう。
ところでCDCの「医療コミュニケーション、マーケティング、メディア部会」では、「ソーシャルマーケティングは、新型インフルエンザへの国民の準備活動をどのように改善し、何をもたらすか?」との問題提起がされている。米国でこの秋冬に予想されている新型インフルエンザ流行を、「ソーシャルマーケティングが解決すべき社会的課題」としてとらえ、マーケティング専門家グループによる議論が開始されているのであるが、これは実に興味深い。
ちなみにこのグループでは、なんと「ブランドネーミング」の問題が取り上げられたようだ。米国メディアなどでは、新型インフルエンザを一般に「H1N1」と呼んでいるのだが、これでは「ブランド」として弱いので、新しいネーミングが必要だとの主張である。これに対し、「核心となる問題はブランドネームではなく、ワクチンのロジスティックスとディストリビューションの戦略にある」との共通認識が結局のところ多数を占めたようだ。だが、新型インフルエンザ問題を「ブランド」の問題としてとらえるとはユニークだ。つまり、社会的キャンペーンのコアとなる「ブランド、メッセージ、メディア」というコミュニケーション戦略の視点から、新型インフルエンザ問題が捉えられたわけである。
このように新型インフルエンザなどの社会的脅威を、ソーシャルマーケティング課題として積極的にとらえ、その戦略的な問題解決をはかるような新しい動きが出てきていることに、特に注目しておきたい。日本でも「ワクチンの確保と接種対象選定」が問題になりつつあるが、日本のマーケティング界からは何の反応も聞こえてこない。
三宅 啓 INITIATIVE INC.
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