米国の代表的患者SNSであるPatientsLikeMeと、Googleの遺伝子解析サービス会社である23andMeが6月9日、パーキンソン病克服プロジェクトで提携することを発表した。すでにこのブログでも取り上げたが、この春、両社はお互いに似たようなプロジェクトを相次いで起動している。PatientsLikeMeは、ALS患者コミュニティ向けに遺伝子検索エンジンの提供を開始し、ALSの原因と結果の解明および治療方法開発を加速化することを発表した。一方、23andMeは全世界から1万人のパーキンソン病患者を集めて大規模コミュニティを立ち上げ、同社の持つ遺伝子解析技術をもとに、パーキンソン病の原因と結果の解明を早めると発表している。
ALSとパーキンソン病と対象疾患は異なるものの、両社のプロジェクトは「遺伝子、コミュニティ」という共通キイワードで括ることができ、しかもまったく同じ目標を持っていたのである。「ここまで似ているのなら、一緒にやればいいのに」と思っていたが、案の定、両社の提携が正式に発表された。
「今日のテクノロジーは、エスタブリッシュメントの研究機関よりも早く動いている。患者が自分の疾患の症状バリエーションを知り、それらを自分の症状と比較できるような能力を持ち、もう一方では自分自身の遺伝子情報を簡単に明らかにできるようになれば、いったいどんなことが起きるだろうかと私たちはわくわくしている。」(PatientsLikeMeジェームズ・ヘイウッド会長)
今回の両社の提携は、まず両者のパーキンソン病コミュニティのデータ共有から始められるようだ。また、PatientsLikeMeは自社のパーキンソン病コミュニティに対し、この春からALSコミュニティに提供してきたものと同じ遺伝子検索エンジンの提供を開始する。
Health2.0ムーブメントにおいて「コミュニティベースで患者の叡智を集め、難病克服など問題解決をはかる」という新しい医療研究開発手法が確立された。これは従来のレガシー医療における研究開発に比べ、はるかに低コストでしかもスピーディーに問題を解決する開発手法である。そしてさらに、そこに個人遺伝子解析サービスが加わり、最後にPHRでデータが集積活用されるということになるのではないだろうか。「コミュニティ、遺伝子、PHR」というのが、どうやら次世代医療のキイワードになりそうである。
<関連エントリ>
「PatientsLikeMeがALS患者の「遺伝子検索エンジン」をリリース」
「問題解決型コミュニティへと進化する患者SNS」
三宅 啓 INITIATIVE INC.