メモランダム2:一点集中、全面展開

涼しい秋風が吹き始め、夏も終わりである。夏の疲れが出てきたのか、どうも体調が良くない。ここはしっかり休むべきなのだろうが、TOBYOの現段階を考えるとそうもいかない。

前回のエントリーで、われわれが考える新医療情報サービスの基本前提みたいなものを考察した。これらの問題を考える際に、いつも話題になるのは「なぜ、日本ではインターネットを使った新しい医療サービスが出てこないのか、成功しないのか」ということである。これについてはこのブログでも何回か考えて来たのであるが、結局、日本医療をめぐる妙に権威主義的で硬直した制度文化や言説空間が問題になるのではないか。つまりビジネスアイデアやモデルうんぬん以前に、その業界土壌自体が固く貧しいという現実が立ちはだかっているのだ。だとすればおおまかに言って、ビジネスプレイヤーが取るべき態度は二つに分かれる。すなわちそれらの業界土壌に適応するか、それともその土壌を作り変えるかである。

そして誰が考えても、「土壌を変える」よりは「適応」する方がはるかに容易で手っ取り早い。だからこれまでの「Health1.0」のプレイヤーたちは、土壌への批判や変革のための行動を自ら封じ、ひたすら土壌への適応に励んできたのである。これが日本におけるかつての「eヘルス、インターネット医療」などの空虚な言葉の実態である。「eヘルスで日本の医療を変える」など勇ましいことを言いながら、結局、官庁主催の「検討会」で「消費者代表」を僭称し、さしたる意味もないおしゃべりに嬉々として興じて来たのである。

自らリスクを取り、土壌を変革すべく行動すること。蛮勇アイデアをふるい、一躍エッジへ向け疾走すること。これを実行しなければ何も新しいことは起きないのだ。そして、ようやく機は熟しHealth2.0の風が巻き起こりつつある。さまざまな解釈はあるだろうが、やっと消費者・患者が実体として医療に参加できる状況が整ったということだ。スタートアップ企業は、この大きな流れを自分たちの力にすべきだ。

だが、医療の「土壌」全体を変えることを考えるよりも、どこか一点を突いてそこを突破することだ。「あれもこれも」ではなく、「ここを突けば全体が動く」ような、そんな「集中すべき一点」があるはずなのだ。われわれはそれを闘病ネットワーク圏に見ているが、他にもあるだろう。さまざまなスタートアップ企業が、それぞれの強みに従って、それぞれの「一点」に自己の力を集中すれば、「土壌」全体を変え動かすこともできる。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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