YouTubeで増える医療教育ビデオ


10月28日付ニューヨークタイムズは、米国歯科医を中心としてYouTubeに教育ビデオ投稿が増加しており、医療機関がYouTubeを集客プロモーション・チャネルとして利用し始めたと報じている。ペンシルバニア州ベンサレムの歯科医ジェリー・ゴードン氏は、ビデオクリップ「根管治療実演」の出演者兼演出家である。ビデオでは実際の患者を治療しながら根管治療手順の詳細を説明し、無痛充填治療が完成するまでをステップごとに「ライブ」で見せている。広告ビデオと言うよりは、むしろ専門情報提供をメインとする教育ビデオという作りになっている。

この10分のビデオクリップは制作コスト2千ドルで地方のビデオ制作会社に発注され、YouTubeに投稿して以来、二ヶ月間で1万1千回以上の視聴回数があるという。YouTubeでビデオを見てジェリー・ゴードン氏の歯科医院を訪れる患者も増えているようだ。ゴードン氏の歯科医院ウェブサイトを見て来院する患者は2006年で26人だったが、YouTubeにビデオを投稿して以来、今年は既に68人を数えるという。

YouTube → 自院ウェブサイト → 来院

単に自院サイトだけの情報提供活動に加え、YouTubeに集まる巨大なアテンションを自院サイトに誘導することによって、上記のような誘客チャネルがうまくワークし始めたようだ。

一方、YouTubeでも、このような専門情報提供型ビデオに対するユーザー側のニーズが増えてきているという。「人々はこのような種類の情報に引きつけられています。私たちはこれらの種類の教育ビデオの増加を注視しています。」とYouTubeのスポークスウーマンであるジュリー・スパン氏は述べている。YouTubeでは、ここ数ヶ月このような専門性のある教育ビデオが伸びてきているという。

先週のエントリーでビジュアル医療情報提供の進化を取り上げたが、今後、歯科医のみならず、このような教育ビデオによる情報提供はますます増えそうである。それも自分のところのウェブサイトにひっそりとコンテンツを置くよりは、YouTubeのような人の集まるところへコンテンツを置いたほうが効果的であるのは間違いない。

ビデオ自体の作り方も、あからさまに集客目的が透けて見えるような広告色を出すよりも、「医療情報提供のための教育ビデオ」という作りの方が有効だろう。医療者は自分の専門分野と得意とするスキルを分かりやすく伝えることによって、生活者・患者の医療情報ニーズと医療選択に寄与することができ、さらに結果として自院の集客を促進することも可能となる。

この事例はまた、Health2.0で語られている「情報の流動性創造」という課題にも繋がるものだと思う。コンテンツが特定のサイトに固定され縛られている状態が「1.0」的な状態であるとすると、この事例のようにコンテンツが特定サイトからYouTubeやその他の場所へ解放され、流動化し、フローを生み出すことによって、ユーザーをはじめたくさんの関係者に新たな価値を生み出すことが「2.0」的な状態なのである。

Source:The New York Times, by ANNE EISENBERG, October 28, 2007

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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