画期的なビジュアル医療情報サービス: Visible Body

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今月、11月中ごろにローンチされる予定のVisibleBodyは、画期的なウェブベースの3D人体解剖図提供サービスだ。人体を360度から立体的に見ることができ、皮膚、血管、内臓、骨格など、それぞれ透明化して必要なレイヤー、特定部位や関連部位に限定して見ることもできる。このようなフレキシブルな視点設定とともに、詳細でリアルなイラストもすばらしい。またウェブベースだから、PCとブラウザだけでいつでもどこからでも利用可能である。しかも基本機能だけの利用なら無料。

このブログで以前からしばしば取り上げてきたのだが、最近、欧米ではビジュアル医療情報をウェブベースで提供するサービスが増えてきている。この「Visible Body」の他に主だったところをあげると、IBMチューリッヒ研究所が開発している「3Dアバター方式のEHR」、イメージ病気診断ツールの「VisualDxHealth」などがあるが、先日、「VisualDxHealth」はNLM(アメリカ国立医学図書館)とパートナーシップを結び、NLMのウェブサイトであるMedlinePlus.govに皮膚病のビジュアル情報を提供している。

さて「Visible Body」を開発したのはARGOSY社で、これはどうやら教育用のデスクトップ出版会社らしく、これまで小学生向けからプロフェッショナル向けまで、さまざまなグレードの教材を出版してきたようだ。このVisible Bodyも、第一の用途としては大学などの教材が想定されている。

だが、これら増加するビジュアル医療情報サービスは学校教育だけで利用されるとは限らない。医療現場での患者教育にも利用されてしかるべきだろう。実は患者にとって、文字情報だけで医療を学習し理解するにはかなり困難を伴う。そもそも臓器や部位などの専門的名称が患者にとっては取っ付きにくく、また特殊な漢字表記なども患者にとっては読みづらいものである。それよりも視覚的に部位が特定され、大きさ、形、色なども示されたほうがわかりやすいに決まっている。IBMの「3Dアバター方式のEHR」なども、医療現場で患者に説明するときに、視覚情報が患者理解を助けるものと期待されている。

一方ではビデオ医療情報も増加しており、医療専門のビデオサイトも登場してきている。今後、ウェブでの生活者・患者向けの医療情報提供サービスを考える場合、視覚情報の蓄積と活用が必要になるだろう。だが、コンテンツ制作に予算と手間が非常にかかるのも事実である。その点、出版社などは過去のイメージ(写真、イラスト、図)情報資産を生かしていけるから、比較的参入しやすいポジションかも知れない。

だがこの「Visible Body」を見ていても、ビジュアル医療情報の活用方法は、まだまだ十分に開発されているとは言えないのではないだろうか。これからアイデア次第で、いろいろな用途開発の余地があるはずだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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