ブログ300エントリー突破とTOBYO現状報告

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今週、当ブログは300エントリーを突破し、このエントリーが303本目となります。俗に「エントリー300本で一人前のブログ」と言われているようなので、ようやくこのブログも一人前になれたかな、という感じです。これも、日頃から熱心に読んでもらっている読者のみなさんのおかげです。あらためて御礼いたします。

ブログのタイトルが雄弁に語るように、もともとこのブログは「TOBYO」という私たちの新しいウェブ医療サービスを開発するために、コンセプトや戦略構築に必要なメモや資料を記録していこうとローンチしたものです。しかし、次第に肝心の「TOBYO」開発報告は間遠になり、だんだん海外医療ITそれもHealth2.0と呼ばれる最新のムーブメント周辺の紹介と洞察に軸足が移ってきてしまいました。

当初は、私たち自身の勉強のつもりでこれらの海外最新動向を取り上げてきましたが、ちょうど折よくHealth2.0の勃興期にリアルタイムで立ち会えたのはラッキーだったと思います。そして、これらHealth2.0ムーブメントの中で熱く語られる議論を、日本の状況と対比しながら検討しているうちに、医療に対する自分たちなりのビジョンを組み立てる必要性を痛感し、そっちの方面へ注意を向け始めた次第です。

この過程で私自身の医療観もずいぶん変わりました。はじめは「公共的領域」ということを強く意識していましたが、徐々に「透明性と競争」という方向への視点移動が起こり、これは特にスコット・シュリーブ氏らHealth2.0の論客たちや、アンディ・グローブ氏、アダム・ボスワース氏、レジナ・ヘルツリンガー氏等の影響を大きく受けたためです。

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また、今にして思えば、これら世界の新しい動向や議論を検討し、自分たちなりの医療ビジョンを構築することが、「TOBYO」をローンチするために絶対に必要なことだったと信じています。とは言え、様々な事情もあり、TOBYOは当初予定よりも大幅に遅れて今日に至っています。

しかし、少しずつではあれ、参画スタッフの努力によって作業は進んでいます。時には焦り、逸る心を抑えながら、一歩一歩確実に進んでいくしかないと自分に言い聞かせています。アルファ版完成まであともう少しです。年内にはベータ版に着手します。

日本のウェブ医療サービスを見ていると、発想が1.0段階に制約されているようなケースが多いような気がします。この「限界」を突破するためには、事業デザインのみならず、今の医療制度デザインまで変えていくしかないかもしれません。米国におけるHealth2.0ムーブメントが、必然的に医療制度全体の変革を志向するベクトルを持たざるを得なかったように、真に新しい質をもったサービスは日本においても、旧来の制度を乗り越えていくビジョンを獲得する必要があるのです。

たとえば、われわれは日本において、いまだに医療機関や医師のパフォーマンスをきちんと評価するレーティング・サービスを一つも持っていないのです。これは、相互比較可能なアウトカムデータや院内感染率データがほとんど公開されないという制度的な原因があるためです。米国のHealthGradesのようなレーティング事業が日本で出てくるためには、旧来制度を変えるしかないのです。英国のような日本と同じような社会主義的医療制度を持つ国でさえ、全医療機関の比較評価データが毎年公開されていることを考えると、日本医療の「不透明性」は国際的に際立っていると言わざるを得ません。

インターネット黎明期にあった「インターネット医療」とか「eヘルス」という論議は、牧歌的なインターネット賛美にとどまり、新しいビジョンへの意志が決定的に欠落していました。Health2.0はそれらを批判的に乗り越え、新しい医療ビジョンを獲得するためのムーブメントであり、われわれもそこにシンクロし参画していきたいと考えています。そしてその中で得た新しいビジョンを「TOBYO」に具現化していきます。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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  1. ピンバック: 医薬情報学会α

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