日本におけるHealth2.0

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今日、当方事務所へ、わざわざサンフランシスコから訪ねてきてくれたお客さんがあった。お互い自己紹介の後、開口一番「日本におけるインターネットを利用した医療サービスを、Health2.0の動向も含めてご紹介ください」と聞かれたが、とっさに具体例を挙げることができなかった。考えて見れば、インターネットが始まって以来、日本で確たるウェブ医療サービスというものが出現しただろうか?。そう考えると、現状は「2.0」どころか「1.0」にも達していないのではないかと思う。

日本におけるウェブ医療サービス

これまでもたびたびこの話題には折りにつけ触れてきたが、かつて「eヘルス」などと言っていた人々は消え去り、結局残ったのは「病院検索、ポータル、その他」ということだが、さしたるインパクトも事業としての成果も挙げているとは言いにくい。

これは、なぜなのか?。医療とインターネットに共通するのは、どちらもパブリック・スフィア(公共空間)に位置づけられるという点である。その意味で本来、両者は親和性が高いのだ。この「親和性」を充分に活かせていなかったことが、ウェブ医療サービスの本格的な登場を阻んでいたのではないだろうか。

数年前に「eヘルス」提唱者の一人は、「インターネット医療サービスに潜在的需要があることは皆わかっている。だが、『一体、これを誰がやるのだろう?』と全員が腕組して首を捻って遠巻きにしている状態。」と状況を説明していた。これはおそらく正しい状況認識であったのだろう。

だが、あれから数年を経て、何か新しい成果があったかというと”ナッシング”である。この間、官庁は毎年医療プロジェクト提案案件に補助金を投じ、民間でも同じような仕組みの事業創出「コンソーシアム」まで作られたが、結局、何も生み出すことは出来なかった。

失敗の教訓と未来の展望

かつて「eヘルスで日本医療を変える」などと喧伝していた人たちには、この間の総括を出してもらいたい。失敗の教訓を明確にしてもらいたい。本当はそう思う。しかし、無責任な連中を槍玉に挙げてみても詮無いことである。評論家やジャーナリストに噛み付いて見ても、何か新しい価値が生まれるわけでもない。価値は自分で作っていくしかない。

この数年間のウェブ医療サービス開発のむなしい推移を点検すると、唯一、「未来の展望」へつながるのはweb2.0との遭遇であった。web2.0はパブリックスフィアとしてのwebを再評価するムーブメントだと言えるだろう。そう見ると先述したように、本来、医療とウェブの両者を通底するものとしてあったパブリックスフィアという属性を、ようやく明確に具体的に扱えるようになったのである。つまり、web2.0と遭遇し学習し経験を積んだ今、やっとサービス開発の条件が整ったのではないか。

われわれは、その条件の一端を取り出して「TOBYO」というPGMを作ろうとしている。そして、このほかにもまだ多数の可能性があるはずだ。米国でも、ようやくHealth2.0が本格的にブレークするところまで来た。日本は、まだまだこれからだが、過去の「eヘルス」という失敗を乗り越えて前進しよう。その新しい状況を作るのは、エスタブリッシュメント陣営ではなく、自らリスクを取って挑戦できるベンチャー企業群であるはずだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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