GoogleHealth 再び?

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5月22日、フロリダで開催されたアメリカ医療情報科学協会(AMIA)主催のカンファレンスにおいて、GoogleのVP(Vice President)にして医療部門を統括するアダム・ボスワース氏が”Putting Health into the Patient’s Hands – Consumerism and Health Care”と題されたキイノートスピーチをしている。ボス・ワース氏の発言については当ブログでも注視してきた(こことかここ)が、Googleの医療分野に対する取り組み方針が、徐々に明確な形を取りつつあると感じられるスピーチである。米国ブログスフィアでは「いよいよ、GoogleHealthの起動が近づいているのでは」との声も高まっている。

Googleの未来医療ビジョン

「私は医療の未来ビジョンを明確にするところから始めたい。それは、シンプルでわかりきったことのように聞こえるかも知れない。だがそれは、今の我々の現実とは非常にかけ離れている。まず、私は手短に、このビジョンがいかに消費者に大きな価値をもたらすかの例を説明したい。最後に、私はこのビジョンがゆっくりと苦労を伴いながら現実化するために、何が必要条件となるかを話したい。(中略)ビジョンとは安いものだ。誰でも夢は見られる。だが、夢を現実に換えるためにはハードワーク、粘り強さ、汗、そして巨大なエネルギーの蓄積が必要なのだ。」

このような出だしで始まるボスワース氏のスピーチ。まずタイトルの”Putting Health into the Patient’s Hands – Consumerism and Health Care”が、Googleとボスワース氏の医療分野に対する視点と立脚点、つまり医療観を鮮明に表明している。あくまでも「消費者視点」であり「コンシューマリズム」なのである。そしてそのことを次のように語っている。

医療情報の消費者主権を主張

「未来医療のビジョンは、消費者が医療と保健に関する彼ら自身のすべての個人データ(私はこれをPHWと短く呼んでいる)を持つべきである、という前提から出発すべきだ」

「その個人医療データの使用を完全にコントロールするのは、唯一、消費者であり、生命保険会社でも、政府でも、雇用者でも、医師でさえもない。追加前提として挙げると、我々は個人の医療・保健情報に関する電子フォームの全てのデータについての権利を、消費者が持つべきだと信じているということだ。この点を、人々はしばしば誤解して、HIPAAがこの権利を与えていると論じている。だが実際は、あなたの医師が電子カルテ(EMR)を持っていないとしても、そして85%の医師は持っていないのだが、あなたが行った検査所、もらった処方箋、そしてあなたの身体の検査映像は(他の医療関係者は利用できても)、あなたには電子フォームで利用できないのだ。(中略)。我々は、これらのデータがフローしているのなら、消費者にもフローすべきだと要求する権利を消費者が持つべきだと信じている。」

これまで米国や日本のEHRなどの議論を見ていると、そこからすっぽり抜け落ちているのは、結局、個人医療情報が誰に帰属するかという論点である。当然、これは当の個人に属するものであり、個人がそのデータのすべての権利を持つことは当然であろう。

ところがEHRなどの従来議論では、セキュリティや技術的な仕様ばかりに議論が集中しており、肝心の当該データの帰属と権利は無視されてきたのである。それに対しGoogleは、医療情報システムのすべての議論の前提として、最初に「消費者主権」を立てるべきだと主張している。

その上で、ボスワース氏は次の三点を未来医療ビジョンのコアとして提起している。

●Discovery
●Action
●Community

この三つの「消費者のコア・アビリティー」については、改めてエントリーを起こしたい。

HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)
医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律

三宅 啓  INITIATIVE INC.


GoogleHealth 再び?” への1件のコメント

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