ShareCare: Social Q&A Platform

ShareCare201010

今回のHealth2.0_SF2010で一番注目を集めたShereCare だが、すでにサイトは稼働している。マシュー・ホルトがブログで「今回、ShareCareのためにルールを破った」と告白しているが、それほどまでに別格扱いされているのは何故か。おそらくそれは、CEOのジェフ・アーノルドをはじめ豪華メンバーとクリーブランドクリニックなど豪華ブランドの結集、そして破格の投資額によるところが大きいのだろう。

しかしこう書いてくると、強い既視感を抑えることができない。あの”Revolution Health”(以後RHと略す)の登場シーンとダブって見えるのは、いたしかたないことだろう。だがRHは”Revolution”を起こすことも、さしたる成果を収めることもなく、EveryDayHealthに売却されてしまった。熱狂、興奮、そして失望。2007年から始まったHealth2.0のほんの短い歴史において、これは最初の一つのサイクルの終りを告げる事件であった。

しかし今にして思えば、RHはおよそHealth2.0領域にあるサービスを手広く網羅したのではあったが、肝心のイノベーションはどこにも見当たらなかった。これに対して、対象領域を限定し、徹底的にサービスの進化を進めたPatientsLikeMeやSermoが成功を収めたわけだ。このことはサービス領域を総花的にあれもこれもと広げるよりも、特化した領域を絞り込んで深化深耕するほうが、Health2.0においては有利であることを教えている。何事もそうだろうが、あれもこれもと手を広げすぎるとどれも中途半端に終わってしまい、結局何をしたいのかがわからなくなってしまう。 気をつけた方がよい。やはり基本は「選択と集中」。

では、ShareCareはどうだろうか。ジェフ・アーノルドはShareCareを一言で「ソーシャル・Q&A・プラットフォーム」と定義しているようだ。つまり従来の「Q&A」サイトではなく、ソーシャル志向を持ったプラットフォームとして機能することをめざしている。また「Q&A」という古典的なサービスをコアとして、そこに医療エキスパート(医師、看護師、医療機関、製薬企業、保険会社、医学研究者、NPO等)の幅広い集合知を結集していくことも述べられている。

最初「Q&A」と聞いたときは首をかしげたのだが、実際にShareCareサイトを使ってみて、非常にシンプルでウェルメイドな作りであることがわかり、わりと好感を持てた。「でも、一つの質問に対し複数のエキスパートから違った回答があるということは、ユーザーを混乱させることになりはしないか」。こんな疑問を呈する人はいるだろう。特に日本では。

しかし今日、絶えずエビデンスは書き換えられ、毎日のように新しい知見や技術が登場し、従来の知識情報はどんどん古くなっている。今日正しいとされる情報であっても、一年後も正しいかどうか誰も保証することなどできない。当然、疾患や治療法についての知識情報は多様であり、「永遠に正しい単一の知識情報」などはない。情報を読み解くリテラシーと、自分なりに選択するチカラこそが、ますます必要になっている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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