ウェブ医療サービス時評 1206: コミュニケーションの貧困

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いよいよ梅雨入り。石神井公園を散歩すると、紫陽花のブルーとバイオレットが目に鮮やかだ。

さて、今月からローンチされた協和発酵キリンの「個別化医療・抗体医薬」啓発参加型キャンペーン「サンダーバード・コーポレーション」。従来の疾患啓発サイト・スタイルを壊し、まったく新しい社会的コミュニケーションを創造しようという意図はわかる。これまで製薬会社各社が多数作ってきた「疾患啓発サイト」なるものは、あまりにも画一的で凡庸で、ユーザーのアテンションを集めるパワーがなさすぎた。とにかく退屈でおもしろくなかったのだ。

啓発サイト側のこのような閉塞状況を、なんとか打ち破ろうという意欲に敬意を表するにやぶさかではないのだが、ここまで「作り込み」が過剰になると、敬意を通り越して逆に「やりすぎ」の感が強まってくる。たしかに「話題になる」ことは間違いないだろうが、肝心の「個別化医療・抗体医薬」のメッセージが霞んでしまい、あからさまに「広告屋のノリ」が丸見えで、本末転倒と言われてもしかたがない。

だが、「凡庸なる疾患啓発サイト」に対する鋭利なアイロニーとして見るならば、これもまたそれなりに意味はあるのかも知れない。マス広告主体のDTC広告の時代は終わっているのだが、ではウェブにおけるDTC活動が活性化しているかといえばそうでもない。数えきれないほど多くの疾患啓発サイトが林立しているが、そのほとんどは閑古鳥が鳴いており、投入する予算の割に、有効なコミュニケーションを質量共に創造出来ていない。

それらを嘲笑うかのようにローンチされた「サンダーバード・コーポレーション」は、製薬そして医療分野におけるコミュニケーションの貧困を鋭く逆照射している。というか、啓発メッセージ抜きに、もう単純にこの「作り込み」で遊んで、楽しんだほうが賢明なのかも・・・・・。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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