患者のクチコミによる医薬品評価

treato

私たちと同じようにネット上の患者の生声を収集し、そこから新しいサービスを生み出すことをめざしているイスラエルのFirst Life Researchだが、医薬品の副作用にフォーカスした、患者のクチコミによる医薬品評価サービス“Treato”を開始した。この前まで、たしかバーティカル検索エンジンを公開していたはずだが・・・・いろいろ苦労しているようである。

しかし英語圏すべてを対象にしているとはいえ、なんと集めた患者コメントが10億件(!)。これはすごい。すごいのだが、試しに薬品の副作用情報をいくつか検索してみると、10億コメントにしては検索結果件数が少ないような気がする。これは以前も触れたことがあるが、First Life Researchが集めている患者の声はほとんどがディスカッション・ボードのコメントなので、そのあたりに限界があるのかも知れない。

だがこのサービスは、前エントリで書いておいたdimensionsのカスタム・サービス「医薬品評価サービス」の参考になる。distillerが抽出する特定薬品の体験事実群を副作用に特徴的なワードでフィルタリングするか、あるいは特定ワードの共起ルールを作ってマイニングしてもよいだろう。

いずれにせよ、医薬品を実際に体験しているのは医療者ではない。患者である。そのことを忘れてほしくない。そして、その声を中間項抜きでダイレクトに聴くことが必要であり、そのツールがdimensionsだ。

日本の闘病ユニバースは、謝礼やポイントをもらって自らの体験を公開しているのではない。誰かから依頼されたり、誰かに質問されて「回答」しているのでもなく、あくまでも自分の意志で自発的に発言している。闘病ユニバースにおける患者体験公開は、すべて無償の行為なのだ。クローズドなコミュニティに囲い込まれ、その内部カルチャーや慣習に拘束されているわけでもない。いかなるバイアスとも無縁であり、ただ「自律、分散、協調」というネットの原理に基づいて、個が自由にホンネを表白しているのだ。

そいう意味で、最近「患者のホンネ」という言い方をしているが、これは修辞的な言い回しを意図しているのではなく、まさに闘病ユニバースの本質をそのまま言っているのである。

しかし日本の患者会というのは、なぜディスカッション・ボードを作らないのだろう? First Life Researchが収集しているコメントの多くは患者会のディスカッション・ボードのものだが、日本でこれと同じことをやろうとしてもできないだろう。患者会サイトは多数あるのだが、なぜかそこで自由に意見交換するツールは用意されていない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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