HealthLatは、薬品や手術についての患者や医師の体験を集め提供するサイト。最近の医療情報提供サービスの傾向として、一般的な「医学情報」から、患者や医療者の「実体験の情報」へと情報内容はシフトして来ている。この背景には、医療情報の中心的メディアがレガシー・メディア(新聞、雑誌、書籍、テレビ等)からウェブへと変化したことが、やはり大きいファクターとしてあるだろう。最近の調査データなどにも示されているが、ウェブが名実ともに医療情報フローの主要インフラになり、これまで捉えがたかった個々の患者や医療者の体験情報までも、大量に収集し提供できるようになったのである。
だが現在問われていることは、これら患者や医療者によってもたらされる「現場の体験」の情報価値をどのようにマネタイズするかである。その注目すべき試行の一つがこのHealthLatなのだ。
HealthLatでは患者や医師が自分の体験を「売る」ことができる。その仕組みはこうだ。
- 登録会員である患者や医師は、HealthLatの指定する書式に従って自分の体験をレポートにして提出する
- 体験レポート提出ごとに、登録会員はHealthLatクレジット・ポイントを獲得する
- 体験レポートがHealthLatで利用されるたびに、登録会員は利用回数に応じたクレジット・ポイントを獲得する
- 四半期ごとに会員の獲得クレジット・ポイントは集計され、合計が10ドル相当以上の場合、それに応じた現金が支払われる
また、クレジット・ポイントと現金の交換レートは、四半期ごとに、次のように算出される。
「HealthLat総収入」÷2÷「総クレジット・ポイント」=現金交換レート
上の式で総収入を2で割っているのは、患者と医療者双方の取り分総額を等しくするためらしい。つまり、HealthLatの収入を患者と医師で平等にシェアするという考え方なのだ。
例示されているケースを紹介しておく。
- ある四半期のHealthLat総収入が20万ドル。HealthLatクレジット合計が20万ポイントの場合。
- 交換レートは
20万ドル÷2÷20万ポイント=0.5ドル/ポイント - 期間中、ある会員の獲得クレジット・ポイントが200ポイントの場合
200×0.5=100
従って会員には100ドルが支払われる。
では、HealthLatの収入はどこから得るのか?。サイトでは「リサーチセンター、消費者、その他」などと書かれており具体的には明示されていないが、これは「企業秘密」なのか?。将来、体験情報利用に課金するのかもしれない。また当然、体験情報の信頼性が問題となるが、HealthLatでは提出レポートごとに会員に携帯電話で情報内容を確認するようだ。
まだまだ不明な部分は残るが、新しいマネタイズ手法へのチャレンジは評価されるべきだろう。今後の展開を注目したい。
三宅 啓 INITIATIVE INC.