Health2.0注目の成長株:Xoova

Xoova

Xoova(ズーヴァ)は機能を絞った非常にシンプルな診察アポイントメント・サービスであるが、ここのところめざましい成長を見せており、昨年7月にリローンチして毎月平均70%づつページビューを増加させてきている。

「最初にXoovaが、自分自身のHealth2.0カテゴリーというものを創造したんだ」とXoovaのCEOトミー・マグロインは言う。「ウェブは、医師より前の段階に存在する第一の医療情報源なのだ。だが医療は、まだオフラインでローカルに提供されている。今日のトップ・ウェブ医療サイトは百科事典のように情報満載であるが、必ずしも行動的ではない。Xoovaの目標は意志決定領域の一部を獲得することだ。消費者が症状などの情報検索から、地元の医療提供サービスを見つけることへ移るそのときに、消費者が目指して行くべきところはwww.xoova.comになるだろう」。

WallStreetJournalが昨年末発表した調査結果によれば、米国成人の77%が医師とオンラインで診察アポイントメントを取ることを望んでいる。オンライン・アポイントメント・サービスと言えば以前にもいくつか存在したわけだが、Xoovaはその詳細な「医師プロフィール」を持っているところが違っていた。この詳細な「医師プロフィール」を詳しく比較検討するために、Xoovaユーザーはサイト訪問あたり平均して5人から20人の「医師プロフィール」を見ているという。このためユーザーのサイト滞在時間は他の類似サイトよりも40%以上長い。

この「医師プロフィール」は医師自身の手で書きこまれる。その意味では「DGC」(Doctor Generated Contents)と言えるだろう。この「医師プロフィール」を作成するツール「Xoova Profile Mamager」は無料でサイト登録医師に提供され、その使いやすさが好評を博している。たしかに、他の類似サイトよりも一層詳しい説明が医師自身の手でプロフィール化されているので、ユーザーの医療選択に役立つためだろうか、Xoobvaを利用している医師は、電話でアポを取っている医師の5倍から10倍の来院患者を獲得しているとのことである。これら「実績」の威力によって、サイト登録して「医師プロフィール」を作成する医師数は、昨年10月から毎月倍増しているようだ。一般ユーザーの「医師プロフィール」ページビューも、昨年12月にはなんと前月比500%を達成している。

以上のような成長実績によって、Xoovaは全米でも評価の高い優秀な医師層を登録会員として獲得することに短期間で成功している。まさに「量」と「質」の両方の獲得が、弁証法的に進んでいるということだ。

このような成果を知った上で改めてXoovaサイトに目を向けると、やはりその機能のシンプルさに再び驚くのである。基本的に用意されているのは医師検索機能だけと考えてもよい。そのベーシック機能を「診療科目、症状、治療法、医療保険」の四つのカテゴリーから使い、地域・都市別に絞り込んで「医師プロフィール」を見た上でアポイントメントをブッキングするだけである。他方、医師には会員登録して「医師プロフィール」を制作する「Xoova Profile Mamager」が用意されているが、一般ユーザーには目立たない。こう見るとXoovaは、通常の「医師検索エンジン」とは根底的に異なるものであり、「医師生成コンテンツ(医師プロフィール)をブラウズし、アポイントメントをブッキングする」ことをサービスコアとする、まさに2.0的なコンセプトによって構築されたサイトであることがわかる。

日本にもクリニック・病院検索サービスはいくつもあるが、Xoovaが医師個人単位であるのに対し、日本ではほぼすべてが医療機関単位である。そしてXoovaが無料の医師生成コンテンツ・サービスであるのに対し、日本では有料「ホームページ」ホスティング・サービスつまり「看板屋」サービスである。

ちなみに、日本で多い「病院・診療所のホームページ安く作ります」的サービスだが、いい加減こんな前時代的かつ1.0的生業からは卒業してはどうか。それだけでも日本の医療ウェブ界は、少しは風通し良く改善されると思うのだ。その際、Xoovaが一つのヒントとなるだろう。

医療機関の方もこのような「看板」同然の「ホームページ代行屋」を利用するのではなく、もっと生活者・闘病者に役立つサイトを自前で作ってみてはどうか。コストはどんどん安くなっている。また、診療所などにはブログサイトで十分ではないか。いずれにせよ「ウェブに看板を立てる」式の発想はもうやめにして、「営業情報」だけでなく真に役立つ医療情報を少しでも多く配信してもらいたいものだ。

話が脱線したが、Xoovaを見て、ウェブ医療情報サービスの要諦が「シンプル」にあることに改めて気づかされた。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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