見放された闘病者についての考察

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最近、ご自分の闘病サイトをTOBYOに登録されるユーザーさんが増えてきている。また、ご自分と同病の他の闘病サイトを探し出して、登録して下さるケースもある。少しづつではあるが、TOBYOにとってはありがたいことだ。しかし、そのようにユーザーから登録された闘病サイトであっても、一応のサイトチェックを実施しなければならない。健康食品等の偽装サイトを除外するためであるが、なかには難しい判断を迫られるケースがある。

最近のケースでは、がんの闘病者がご自分のサイトを登録されたのだが、チェックのためにサイトを拝見してみて深く思い悩んでしまった。この方の場合、正規の医療機関で治療を受けたのであるが、結局、複数の医療機関から「根治のためではなく、延命のための化学療法しかない」との宣告を受けたのである。無論、本人にはがんを根治したいという意欲はあるのだが、病院からこのような宣告をされてしまうことは医療から見放されたも同然である。そこでこの方が選択したのは、様々な代替医療、民間療法のたぐいを積極的に試してみることであった。

以上のような事情によって、この方の闘病サイトは代替医療や民間療法の体験記が過半を占めるに至ったのである。だがTOBYOでは、以前も述べたように「近代医学に基づき正規の医療機関で提供される医療の体験」がメインになっている闘病サイトを登録可とする内規を作っている。機械的にこれに照らし、この闘病サイトを判断すれば登録不可となるはずだ。しかし「医療から見放された」と考えた闘病者が、なお積極的に生きて闘病するために、たとえ代替医療や民間療法を選択したとして、一体誰がそのことを批判できようか。このように考えてみると、その判断は極めて難しくなる。

実際に多数の闘病体験を読んでみると、この方のように「病院から見放された」と述懐する闘病者は多い。そして「見放された患者」は緩和ケアや終末期ケアを受けることになる。だが、今朝(10月9日)の朝日新聞にも報じられていたが、医療界における緩和ケアの占める地位は極めて低い。緩和ケアに対する医療者の認識も意欲も低く、そのサービスや施設やクオリティに関する情報は非常に少ない。このような状況において、積極的に闘病する意志を持っている闘病者が代替医療などに向ったとしても、ある意味でしかたないだろう。

闘病記はこのような深刻な現実をも照らし出す。まず緩和ケアや終末期ケアに関する医療界からの積極的な情報提供が望まれるが、闘病記に蓄積された実際の体験からも、さまざまに役立つ情報を抽出できるはずだ。だがしかし、そうであるからこそ、これらの闘病記が代替医療や民間療法の体験で埋め尽くされてしまうことは、できれば避けたい。そのために、これら代替医療や民間療法の体験を、TOBYOでは内規によって除外することになる。しかし現状は・・・・・・・・。と、これではまさに堂々めぐりである。

もう一度、最初に戻って整理する。医療機関から「あなたの病気はもう治療方法がありません」と言われた闘病者が、やむなく代替医療等を選択した場合、「あなたの闘病記は代替医療体験などがメインになっているから、TOBYOでは登録できません」と言うべきなのかどうか。答えは簡単には見つからない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


見放された闘病者についての考察” への2件のコメント

  1. こんにちは、はじめてまして。

    私も患者同士のコミュニティを作りたいとの思いを持ち、ヘルス2.0に興味を持っている者です。

    現在の日本では、医療情報が一部の限られたものに限定されて公開されていたり、偏った知識をプロモーション目的に利用していたりすることが少なからず見受けられるように感じています。

    また、緩和医療のように日本ではまだまだ医療従事者すら認識が不十分な者が多くいる治療について、もっと国民全体の理解が得られる環境が作られることで、多少なりとも医師と患者のギャップは少なくなるだろうと考えています。

    IT関係の知識に乏しい私ですが、やりたいと思っていた試みのひとつが、まさにTOBYOが目指しているところのような気がします。

    「近代医学に基づき正規の医療機関で提供される医療の体験」を登録基準とする内規を定めることは、一定基準をつくるうえでたいせつなことだと思いますが、同時に、近代医学の定義が難しいところでもあると感じます。

    「病院から見放された」と述懐する闘病者の中にも、本当に見放されている場合はあるかと思いますが、そうではなく医師の説明の仕方が悪いために、もともと病気でネガティブ思考になっているところに勘違いが加わっているケースもあると思います。

    個人的見解としては、上記のような患者さんの闘病記であっても同様の病気で苦しむ患者さんにとっては役立つ情報源になると思いますので、注釈をつけて継続するのがいいのではないかと思います。

    どのように注釈をつけるかが、これまた難しい問題ではありますが・・・

    さらにすばらしいサイト構築を期待しております。

  2. ご存じかと思いましたが、取り急ぎ。
    http://www.twmu.ac.jp/AWNML/N/top/
    ↑このような、病院(この場合は大学病院)で行われている統合医療、というのもありますので、”医療機関から「あなたの病気はもう治療方法がありません」と言われた闘病者が、やむなく代替医療等を選択した場合”というのは全てではありません。

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