雑感と「変化への期待」

梅雨の中休みが続いているが、もう気分は夏へ向かっている。TOBYOはベータ版を公開したが、バーティカル検索「TOBYO事典」の検索対象拡大など、やらなけらばならない仕事は山積している。TOBYO事典のテスト運用をしてみると、当初予定していた以上のインデクシング・ページ数が発生していることがわかり、リソース調整など新たな課題も出てきている。全病名の横断検索実現のためには、今少し時間がかかるかもしれない。

昨日のサンデー毎日記事によれば、今年前半に把握確認された闘病ブログサイト数は2万3千件。なんだかもう少しありそうな気もするが、一応の目安として受け取っておこう。ただ、特に今年に入ってから、かなりの勢いで増加しているような感触もある。また、ブログ以外の一般闘病サイトも無視できない。現にTOBYO収録の5千数百サイトのうち、約三分の一は通常サイトである。これを含めると、闘病サイト数はおよそ3万となる。過去の闘病体験記録のほうは一般闘病サイトにアーカイブし、現在進行形の健康状態や生活雑記をブログで書く、という「使い分け」スタイルは非常にしばしば目につく。これは、時系列で情報が並ぶブログよりも、一般サイトの方が情報をテーマ別に構造化し整理しやすいためと思われる。

ところで、少し前から当方が注目しているのは「医療者による闘病サイト」である。医療者も人間であるから、当然、病気にもなる。では医療者が闘病者になったとき、その視点移動によってどのような医療への見方の変化が起きるのか、あるいは起きないのか。これは「患者-医師」という関係パラダイムを考えるときに、極めて貴重な資料になるのではないかと考えていたわけである。そこでいくつか医師の手による闘病記を注意深く読んでみたが、端的に言って「患者になってみて、はじめて患者の気持ちがよくわかるようになった」ということが異口同音に語られていた。これらを読むと、同じ医療現場にいながら、単にその「立場」が変わることによって「医療」がまるで違う顔を向けてくる様がよくわかる。

では医療におけるこの「立場」の差というものを、いったいどう理解すればよいのだろうか。そんなことをぼんやり考えているところへ、米国からいくつか刺激的な論考が届いた。
一つは「Medical Economics」に発表された、まさに「The new doctor-patient paradigm」というタイトルの記事。副題には次のように記されている。

How the shift from the “physician as wise parent” model to one of more shared responsibility is playing out in the exam room.

そしてもう一本、Health2.0サイトに発表された「Using virtual reasoning to redefine health care」というエントリ。この冒頭は「インターネットは医療産業を再定義している」という刺激的な出だしから始まる。「redefine health care」とは、あのポーター&テイスバーグ「Redefining Health Care」を踏襲してのことであろう。

ここのところ、米国のHealth2.0シーンでは続々と多くの優れた論考が多数収穫されている。少し前までは、スコット・シュリーブ氏をはじめ数名のブロガーだけがHealth2.0についての論考を発表していたことを考えると、隔世の感がある。それらに通底するのは、Health2.0が「患者-医師」関係パラダイムを変え、医療そのものを大きく変えていくだろうという期待感である。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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