Google資本の遺伝子ベンチャー「23andMe」

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春先に「Googleが遺伝子ビジネスへ進出か?」と話題になった“23andMe”だが、その概要が明らかになった。春の段階では、このベンチャー企業の共同ファウンダーのAnne Wojcicki氏がGoogleのSergey Brin氏の妻という点に関心が集まりがちで、肝心のビジネスとしてのその実態は一向にはっきりしないままであった。そして先月12日、ニューヨークで開催されたバイオテック企業にして”23andMe”のパートナー企業でもあるllumina社の「アナリスト・デイ」席上、ようやく”23andMe”がめざすビジネス概要が明らかになった。

それによると、”23andMe”は「消費者の遺伝型の特定」を起点として、「遺伝子情報の保存と活用」のためのサービスの開発をめざしているようだ。現状では「遺伝型の特定」と「遺伝子情報の保存」までを提供する。その方法は以下のような手順を踏むようだ。

  1. “23andMe”に遺伝子サンプルを送る。この「サンプル」とは、唾液もしくは頬の内側表皮を綿棒でこすり取ったもの。
  2. “23andMe”に郵送されたサンプルは最終的にIllumina社へ送られ、そこで遺伝子型が特定される
  3. Illumina社は読み取った遺伝子情報を”23andMe”へ送る
  4. 遺伝子情報はセキュアーなウェブサイトにアップロードされ、登録ユーザーはパスワードプロテクトで利用できる

以上のように、当面このビジネスは「個人の遺伝子情報を個人が利用可能な状態にする」ことを主眼としており、「では、その遺伝子情報をどう活用するか?」という「利用ステージ」のイメージまではまだ描かれていない。近年、特定の遺伝子が特定の病気に関係しているという発見成果が多数発表されてきたが、それらほとんどいまだ限定的な医学的利用にとどまっている。

そこで当面のサービスベネフィットとして、「どっちの親から遺伝形質を受け継いだか?」とか「遠い親戚は誰か?」など、「家系に関する消費者のニーズ」に焦点を絞るとのことである。ユーザーは無料で、上記の手順で自分の遺伝子情報を解析しウェブサイトに置くことができ、自分の遺伝情報についての解説を読むことができる。Illumina社のCEOであるJay Flatley氏はiPhoneに自分の全遺伝子情報を入れて持ち歩いているとのことである。

なおIllumina社の推定によれば「消費者遺伝型特定」市場は、数年のうちに10億ドルに達するという。しかし、はたして「家系情報ニーズ」なるものが実体として存在するかどうかはきわめて疑わしい。だが今後、遺伝子レベルの医療がどんどん進化するであろうことは間違いないだろう。しかもそれは、大量の遺伝子情報がデジタライズされていることが前提になるだろう。それらを睨んで、先行的に消費者の遺伝子情報を大量に集めて行こうというのが、この”23andMe”の本当の狙いであるように思える。そのためか、現在進行中のGeorge Church教授(ハーバード・メディカル・スクール)が主宰するプロジェクト「パーソナル・ゲノム・プロジェクト」とも提携している

ところで”23andMe”という社名だが、人間の23対の染色体数からとられたようだ。同社はGoogleからの360万ドルをはじめ、すでに1000万ドルの資金調達に成功している。

Source: Forbes, “Google’s Genetic Start-Up”, Matthew Herper, 09.12.07

三宅 啓  INITIATIVE INC.


Google資本の遺伝子ベンチャー「23andMe」” への1件のコメント

  1. ピンバック: Initial Directory (initd)

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