Health1.0からHealth2.0へ

health2.0yvonne

昨日エントリーでジョン・シャープ氏作成による「医療業界文化とWeb2.0の価値観対比表」を見たが、早速、この対比表に触発され、いくつか反応がブロゴスフィアにアップされているようだ。

その中でも注目されるのが、Health2.0ムーブメントの論客として有名なスコット・シュリーブ医師の「Health1.0-Health2.0対比表」。そう言えば、この手の対比表も二年前、もういやになるほど見たような記憶がある。前回も触れたが、ティム・オライリー氏が一昨年Web2.0カンファレンスのために作成した有名な「ミームマップ」。それと同時に発表されたのが「Web2.0対比表」であり、シュリーブ医師の対比表もこのオリジナル対比表の「伝統」に敬意を払っているふしがある。

「ミームマップ」にしてもこの対比表にしても、パロディーまで含め、実に多数の修正バージョンが作られた。「ミームマップ・ジェネレータ」というWebサービスまで登場し、好きな言葉を入力するとオリジナルそっくりのマップができる、という代物まであって大いに笑えたのであった。

さて、スコット・シュリーブ医師の「1.0-2.0対比表」だが、さすが良く整理されている。ジョン・シャープ氏の対比表との違いは、その比較対象にあることはすぐにわかる。シャープ氏は「医療業界文化(価値観)」と「Web2.0文化(価値観)」を比較している。対してシュリーブ医師は旧世代医療(Health1.0)と次世代医療(Health2.0)を対比している。

from1_0to2_0

このシュリーブ医師の比較対象の設定の仕方については、すでに「より一層、医療改革を重視する方向が明確になっている」と評されてもいる。以前、Health2.0ムーブメントでは医療改革を重視する方向と、単純に医療にWeb2.0を持ち込む方向の二方向があると述べたが、医療改革派の中心人物であるシュリーブ氏としては、当然この表が示すように、Health2.0とは旧世代医療(Health1.0)を改革した後の進化形でなければならないのだ。

この対比表に若干のコメントを付け加えると、まず「ゼロサム対ポジティブサム」という対比がある。これは、誰かが勝者であるためには、誰かが敗者でなければならないゼロサム競争とは違い、次世代医療は関係者すべてがWin-Winの関係で「正の和」を目指すことを示したもの。

「統合性-相互運用性」という対比項目には少し疑問が残る。これはブロゴスフィアでも指摘されてもいるが、「IT統合性-IT相互運用性」という特定をする方がよいのだろう。これは従来個々バラバラに「院内統合システム」を構築することが、他の医療機関との相互連携バリアになってしまっていることを指摘したものだ。

「プロセス代価-結果報酬」という対比項目も目を引く。これは「コスト-価値」という対比項目とおそらく深く関連するものだ。従来の医療費は「医療プロセスに対する請求」であり「コスト請求」であったのに対し、次世代医療においては「結果」として明白になる「医療が提供する価値」に対する「報酬」へと医療費の意味するところが変わることを示している。

ただ、「否定の文化-クオリティの文化」という対比項目は、何となくわかるような気もするが、いまいち明確な対比軸を持っていないようにも見える。最後の「専門的医療情報-普及医療情報」だが、これも「権威としての医師-アドバイザーとしての医師」など他の対比項目と合わせて理解されるものと思える。「権威によって専門知識・情報を閉ざす」という、スコラ学派的アカデミズムの名残やシッポを従来の医療が引きずっているのは否定できない。それに対し次世代医療では、医療主体である患者・生活者が理解できる「普及型医療情報」の方にプライオリティがある。

スコット・シュリーブ医師のこの対比表は、またさらに誰かによって、どんどん修正されていくはずである。まさに次世代医療のビジョンやコンセプトが、ピア・プロダクションによって創造されているのだ。

Photo by David Wallace
http://www.flickr.com/photos/davidwallace/215811983

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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