「ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にする」。これがTOBYOのプロジェクト・ミッションだが、少しづつ可視領域拡大を進めており現時点で2万7千サイトまで可視化できている。ネット上にゆっくりと自然発生的に形成されてきた闘病サイト群をひとつの仮想コミュニティとみなし、私たちはこれを「闘病ユニバース」と呼んできた。三年前、TOBYOプロジェクトがスタートした時点で、闘病ユニバースの規模をおよそ3万サイトと推定したが、この数字で行けばすでにTOBYOは闘病ユニバースの9割を可視化したことになる。
だがここまで来てみると、闘病ユニバースの規模は当初推定よりも少なくとも一回りは大きいような気がする。そしてまだ膨張の途上にあるものと思われる。日々、闘病サイトは新たに生成されており、その旺盛な活動は今のところ衰える気配はない。もちろん、ひっそりと消滅していくサイトもあるのだが、それを上回る新サイト群が続々と登場している。これらのサイト群を仔細に観察してみると、ウェブに同病者の連帯を求め、相互リンクで結び合い、緊密なコミュニケーションを取ろうとするグループと、いかなるリンクも張らずに超然と孤立することを選ぶグループがあることに気づく。
以前触れたように、mixiのような汎用SNSから「逃げ」て来て、新たに闘病サイトを開設するケースは非常に多く、闘病というテーマが他のブログテーマとはかなり異質なものであることをうかがわせる。むしろ「見知らぬ者同士」のルースな関係のほうが、気が楽だと考えられているのだろう。
また、以前からウェブ上の闘病サイトは玉石混淆状態であったが、最近、特にペット闘病サイトの激増があり、一層混沌とした状況を呈している。これらペット闘病サイトを見ていると疾患名も心臓疾患、癌、膠原病、エイズなど人間並みであり、治療法も抗癌剤や放射線治療など高度化している。これでは、そのサイトが人間とペットのどちらの闘病を記録しているのか判別がつかない。「精巣癌闘病記録」と題されたサイトがあったので収録しようとチェックしてみると、これがオカメインコの闘病記録であることがわかった、というふうなことが頻発してきている。知らなかったが、オカメインコも精巣癌と闘っていたのだ。またある疾患などでは、すでにペット闘病のサイト数のほうが人間のそれを上回っていることもある。冗談ではなく、これはもう「TOBYOペット版」が登場してもおかしくないような状況になってきているのだ。
これまで、健康食品やオカルト商品販売を目的とした偽装闘病サイトなど各種ノイズから、資料的に価値ある闘病サイトをどう抽出するかがTOBYOの課題であったが、それに加え激増するペット闘病サイトをどう除去するかが問題になってきた。一番困るのは、同一サイトで人間とペットの両方の闘病体験が記録されているケースだ。この場合、TOBYO事典で検索をかけると、人間とペットの記録がゴチャマゼになり区別できない。だからTOBYOでは、原則としてこんなサイトは収録しないようにしている。
世のペット愛好家諸氏にくれぐれもお願いしたいが、どうかペット闘病サイトと一目でわかるようにタイトルなど明記していただきたい。だが、こうもネット上が混沌としてくると、ますます機械クロールだけのデータ抽出は精度が低くなってくるのであり、手間はかかるが人間によるキュレーションという方法の優位性は当面は揺るがないと思う。
三宅 啓 INITIATIVE INC.
https://www.youtube.com/watch?v=ghU-Lme8o8Q
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