新しいパブリックセクター

AtlanticR&B

先週から体調をこわしたこともあり、この「秋の連休」は全面的に休養しブログも休んだ。ひたすら自宅で音楽を聴いて過ごしたが、連日の仕事から離れ、ほど良い空白期間を得ることができた。まったく違う角度から再度自分の立ち位置を見つめることも、ときには必要だ。

連休を通して、もっぱら60年代AtlanticのStax/Volt系ソウルミュージックをアナログ音源で聞いたが、やはりこのあたりの音は古いMMカートリッジの方が良く鳴る。ロック、ソウル、ジャズなどのジャンルで、結局、一体何を聞いているのかと言えば、やはりドラムスの音を聞いているのだと最近思うことが多い。ドラムスの鳴り方が、これらの音楽を基本的に決定しているといってもよいだろう。そして、音を繊細に上品に聴かせる新しいカートリッジはドラムス再生には不向きであり、むしろ荒削りで大ざっぱな、古くて安物のカートリッジのほうが、より好ましいドラムスの音を再現してくれる。

そんな力感あふれるドラムスの音を浴びるように聴き続けたのだが、数あるサウンドの要素のうちドラムスがキイになっているように、様々な構成要素からなるプロジェクトにもキイになるものがあり、それはきちんと他と峻別されなければならないだろう。ではTOBYOプロジェクトにおいて、それは何かとあらためて問うてみると、やはり「パブリック」ということになる。

TOBYOのビジネススキーム等について、先日のエントリをはじめ今までたびたび考察してきたが、TOBYOがめざしていることは「医療の領域における新しいパブリック(公)」の一翼を雛うことである。日本の医療は国家・行政機関がほぼ全面的に管理してきたが、供給される医療と消費者・闘病者側の医療ニーズとの間には、著しい乖離が生まれてきたのである。公開されている闘病体験ドキュメントを読めば、医療現場におけるこの深刻な乖離をつぶさに見ることができるだろう。この乖離を埋めるのは、もはや国家や行政機関ではなく、「新しい公」を担う諸組織になるだろう。できればTOBYOプロジェクトは、その一端を担いたいと考えている。

国家や行政機関が「公」を独占する時代は終わった。医療においても、民間から「新しいパブリックセクター」を担う多様な組織や活動が出てくることが求められているのである。そしてインターネットは「新しい公的空間(パブリックスフィア)」であり、これら「医療の新しいパブリックセクター」の活動と極めて親和性は高い。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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