「2009ウェブトレンド5」と闘病体験の構造化

Richard MacManusgが主催するブログサイト”ReadWriteWeb“で、”ReadWriteWeb’s Top 5 Web Trends of 2009“が発表された。それによると、Top5は次のようになっている。

  1. Structured Data
  2. Real-Time Web
  3. Personalization
  4. Mobile Web / Augmented Reality
  5. Internet of Things

これらはいずれも、今、インターネットで起きている重要なトレンドだろうが、TOBYOプロジェクトに携わってきた当方としては、やはりどうしても最初にあげられているStructured Data(構造化されたデータ)に目が向くのはいたしかたない。TOBYOプロジェクトは言ってみれば「闘病ユニバースに存在するデータを構造化する試み」であるからだ。

今までこのブログでは、闘病体験を「闘病記」というパッケージに押し込めるような向きを批判してきた。あくまでも闘病体験を事実の集積としてとらえ、ストーリーや物語という情緒的なステージで語ることを意図的に遠ざけてきた。闘病体験は「感動する」ためにあるのではなく、「誰かの病気を治すのに役立つ」ためにあるはずだと、私たちは考えているからだ。だがこの「闘病体験=事実の集積」が消費者や闘病者にとって有用であるためには、それらが構造化され、そしてそれらを利用するためのサービスが用意されなければならない。そのように考えて作ってきたのがTOBYOである。

だから「闘病体験の構造化」はTOBYOプロジェクトにとって、最も重要な課題であると認識してきた。そのような思いからTop5の最初に取り上げられた「Structured Data」を見たのだが、W3CのTim Berners-Leeが提唱するLOD(Linking Open Data)プロジェクト以外にあまり見るべきものはない。このLODは現状Webの他に、機械が理解できるようなDataWebを作ろうという野心的な試みだが、これはその先にあるセマンティックWebへ至る過渡的段階なのか。これに関連してロイターのOpenCalaisなども紹介されているが、当方などが注目してきたStructuredBloggingの標準化仕様であるMicroFormatsなどは、一応スライド中に書かれてはいるが、その実態はいったいどうなっているのだろうか。最近、あまり話題になっていないような気もする。

もともと闘病ユニバースにある闘病体験は、構造化されていないデータの集積である。それらは構造化されていないがゆえに、ユーザーがある疾患のある治療法の体験を探そうとしても、それを見つけるために多大な時間と手間と忍耐が必要になる。だが、それらデータの所在地をサイトネームとURLで特定し、さらに疾患別、患者性別、年齢別に分類すれば、必要なデータへのアクセスははるかに容易になる。また同時にタグでメタデータを自由に付けていけば、データは一層高度に構造化されていくことになる。これらを通じて、まったく無秩序に生成されてきた個々の闘病体験ドキュメントは、はじめて「誰かの病気を治すのに役立つ」ようになるのである。TOBYOはそのような考え方から生み出された。

だが、このように事後的に構造化をおこなうよりも、できればコンテンツ生成と同時に構造化されることの方がのぞましい。そこでブログの構造化のために、「Structured Blogging」という構想が提起され、具体仕様としてMicroFormatsが数年前から提案されているのだが、この普及はまったく進んでいない。今後、闘病ユニバースに対して、当方からMicroFormatsをもとに一定の仕様提案をする必要はあるだろう。だが、最近の闘病ブログサイト動向などを見ていると、全部が全部ではないにせよ、「構造化」をブログ作者に求めるのは無理なのかとも思っている。むつかしいところだ。

三宅 啓 INITIATIVE INC.


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