先日エントリで日本の医療機関ウェブサイトの現状について、かなり悲観的な見方を書いた。ちょうどハーバードメディカルスクールのCIO(Chief Information Officer)を務めるJohn Halamka氏が、BIDMC(Beth Israel Deaconess Medical Center)のウェブサイトの全面リニューアルについてのエントリをTHCBにポストしたので、改めてこの問題を考えてみた。
BIDMCサイトはMS「SQL Server 2008」上に構築されているのだが、サイト上の様々な機能を、各種アプリケーションプロバイダーから調達し組み合わせて最適化して出来上がったものである。サイト上の各機能とそのプロバイダーは次のようになっている。
- Blogs – Uses a SiteCore provided blogging module
- Chat – a commercial application called Cute Chat from CuteSoft.
- BIDMC TV (news and information videos produced by BIDMC)- Hosted by BrightCove.
- Medical Edge (videos about innovation produced by BIDMC)- Hosted by BrightCove.
- Podcast Gallery – Hosted on BIDMC servers.
- Health Quizzes – created using a commercial application called SelectSurvey.NET from ClassApps.
- Social Networking – entirely hosted by outside service providers (Facebook/Twitter/You Tube).
- Secure patient web pages for communication with their families – a commercial application provided by CarePages.
- Conditions A-Z – a web-based encyclopedia branded for BIDMC using commercial reference provided by Ebsco.
- Search Engine – We’re using a Google Appliance
さすがにこれだけの機能を搭載したせいか、サイト全体の応答はやや遅く感じられる。だが、ユーザーとの動的なコミュニケーションをビデオ、チャット、ブログなどを使って創出しようという強い意欲はわかる。対して日本の病院サイトの場合、パンフレットがそのままサイトになっているかのような作りが一般的である。一方はコミュニケーションを強く意識した作りであり、もう一方は結果的に「掲示&通達」にとどまる作りになっている。なぜこのような差異が生じるのだろうか。
そう考えると、おそらく問題は「医療とコミュニケーション」という点に行きつくのではないかと思える。医療はもともと「コミュニケーション」によって成立している。患者と医師、医師とコメディカル、病院と地域社会など、医療は様々なレベルのコミュニケーションの束によって機能するはずだ。ところが上記のような日本の病院ウェブサイトが語っている現状は、日本の医療におけるコミュニケーション軽視という事態である。
「医療コミュニケーション」というテーマがもっと語られるべきではないだろうか。たとえばTOBYOを、私たちは「患者体験の共有」という側面で見てきたのだが、さらに「医療コミュニケーションの促進」という観点からも捉えていく必要があるかもしれない。
三宅 啓 INITIATIVE INC.