包括的医師検索サービス「Vitals」

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昨年から世界中で一気に弾け始めたHealth2.0だが、まだまだニューフェイスのローンチは続いている。昨年末、米国ニュージャージー州リンドハーストからローンチした「Vitals」は、これまでにない新しいタイプの医師検索サービスと言えるだろう。

「われわれは皆、人生のある時点で、医師のところへ行く必要があるだろう。それは軽い症状であるかも知れないし、あるいは深刻な症状かも知れない。どの医師のところへ行くかという選択と、そしてその医師のパフォーマンスが、生きるか死ぬかを決定するかもしれないのだ。」

このように、医師選択の重要性から「Vitals」は自分たちが目指すサービスを語り始める。つまり、消費者の医師選択ニーズを徹底的に焦点化していることが読み取れるのだが、「あれも、これも」ではない一点集中型コンセプトこそが、今後の新しいウェブ医療情報提供サービスに最も必要なことなのだ。

そして、一点集中型コンセプトを貫くならば、そのコンセプトに導かれた「深化&拡充」を実体化して見せなければならない。たとえば「医師検索サービス」であるなら、従来の同類サービスを一歩も二歩も超えて「深化&拡充」をどう実体化するかが問われるはずだ。Vitalsはそれを「包括的な医師情報の提供」という形で実体化している。

これまで一般的な医師検索サービスと言えば、氏名や場所から医師を検索し、医師プロフィールを提示することが普通であった。または、医師プロフィールにかえてユーザーの医師レイティング結果を提示するサービスもあったし、あるいは医師同士のピア・レビューを提示するものもあっただろう。つまり従来の医師検索サービスとは、以上のように様々な特定のポイントから医師情報を提供していたものの、全方位から医師情報を収集し、一ヵ所に集めて全部を見せるようなサービスは存在しなかったのである。

Vitalsはここに着目した。「消費者の医師選択ニーズ」を従来の先発サービスよりも一層高度に充たし満足させるために、全方位から大量に医師情報を収集し、ワンストップで提供するようなサービスを目指したのである。その際、「全方位の医師データ」とは次の三つからなる。

  • 実証的な医師情報:医師の学歴、専門分野、資格、賞罰、実績などの情報
  • 消費者レビュー:消費者の体験に基づく医師評価情報、レイティング・データなど
  • ピア・レビュー:他の医師による評価、レコメンデーションなど

vitals_graphこれまで以上三点すべてをワンストップで提供する医師検索サービスはなかった。また、Vitalsは全米75万人以上の医師情報をすでに蓄積しているが、このように大量の医師情報を収集し無料で提供した類似サービスもこれまでなかったのである。

たとえ「医師検索サービス」というありふれたサービスであっても、コンセプトをシャープに切り出し直し、「深化&拡充」の徹底による差別化を実現しえた時、新しいユーザーベネフィットを創造することができる。特にHealth2.0では、「コンテンツを提供する」のではなく、「機能をシンプルに絞り込んだツールを提供する」という開発ベクトルが次第に明確になってきている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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