全欧州の医療情報共有をめざすepSOS

epsos

ヨーロッパ各国の医療情報システムを相互運用する広域実験プロジェクトが開始される。このプロジェクトはepSOS(European Patient Smart Open Services)と名付けられ、欧州委員会の支援のもとにEU加盟12カ国が参加を表明している。これら各国はそれぞれ自国の国民医療情報システムを持っているが、今回の実験プロジェクトは各国システムを相互に接続し、EU市民がEU域内のどこにいても、自分の医療情報を利用できる環境を提供することをめざしている。背景には、近年、国境を越えた市民の域内移動が活発化しており、これに対応する医療情報システムが必要になっている事情がある。
このepSOSは、米国のNHIN(National Healthcare Information Network)構想と非常によく似ている。患者個人の医療情報は「個別医療機関から地域医療機関の相互運用へ、さらに全国へ」とその利用圏域を拡大させる方向でシステム整備が行われつつあるが、やがて国境を越えたグローバルな医療情報システムへ発展するのかもしれない。epSOSやNHINはその基礎的な広域インフラとなるわけだが、今のところ日本では全国レベルの医療情報システムさえ姿は見えない。

医療ツーリズムの成長、そしてクリーブランドクリニック等の世界進出構想を見ていると、今後、医療サービスがどんどん国境を越えて行くことが予想される。その際、では従来の国民医療システムはいかなる位置づけになるのだろうか。epSOSなどが実現されると、たしかに医療情報は簡単に国境を越えられるのだろうが、もちろん各国の医療制度が国境を越えることはない。国境を超えた「ユニバーサル医療システム」みたいなものが、いずれできあがるのだろうか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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