先月の中ごろに、米国でクラウド・コンピューティングの医療への活用について議論が活発に交わされていた。これにはクラウド・コンピューティング業界による医療界への売り込みという側面も見え隠れしていたのだが、一方ではEMR、EHR、PHRなど医療情報システムが乱立してきており、円滑なデータのやりとりをする上でクラウド・コンピューティングの活用が注目されて来ているという事情もある。
だが振り返って日本の医療情報システム界隈を見ると、かなり硬直的な完全無欠システム観があいかわらず跋扈している。数年前に厚労省が開催した医療情報システムに関する「検討会」などを見ても、たとえば「医療データを医療機関の敷地外に保存することを認めるかどうか」で大議論したあげく、夥しく詳細を極めた細目を付すなど、その硬直した前時代的で官僚的な発想には驚くほかない。これではPHRなどいつまでたっても生まれはしまい。
ところでこのクラウド・コンピューティングだが、その概念はかなり広くおおざっぱに用いられている。単なるストレージサービスから仮想サーバまで、多様な広がりをもって日々進化しているのである。これらクラウドなサービスを提供する米国の企業では、システムの安全性について「ファイブ・ナイン」、つまり小数点以下5桁まで「9」が並ぶ「99.99999%」の安全性を保証するところまで出てきている。
しかし、たとえば仮想サーバなどの著しい進化などを見ていると、あのグレッグ・イーガンの作品世界がもはや現実になりつつあることさえ実感される。今後、クラウド世界のサービス進化のスピードはリアルを上回り、劇的なコストダウンを実現していくのではないだろうか。
実はわれわれのTOBYOにおいても、システムの一部をクラウド化してみようと、現在準備を進めている。これは先月サーバダウンの反省を踏まえたリスク分散ということもあるが、われわれベンチャーにとって、クラウド・コンピューティングが提供するサービス、スケーラビリティそして価格が、非常に魅力的になってきていることもまた確かなことなのだ。
三宅 啓 INITIATIVE INC.
セールスフォースの内田さんとはお話されました?
久しぶりにアクセスさせていただきました。
Google の Cloud である Google App Engine に利用されている DataStore は RDBMS とは異なりますが、要領をつかめばデータを移行していくこともできそうです。