医療ゲームの可能性

changemakers

先週シアトルで医療者、研究者、ゲーム開発者が集まり、「医療ゲーム」の可能性を探るコンファレンスが開催された。

このコンファレンスは、医療と健康の改善をめざす社会事業財団RWJF(Robert Wood Johnson Foundation)が後援するオープンソース・ソーシャル・ソリューション組織”Changemakers”が主催したもの。

Changemakersは、さまざまな社会的課題をマスコラボレーションによって解決することを目指している非常に興味深い団体であり、今回、「なぜゲームが問題か。健康と医療を改善する処方箋」と題して公開コンペを開催し、世界中から医療ゲームアイデアを募集している。今日(8月29日)現在、インドやイスラエルなど4カ国から14のアイデアがエントリーされている。

「ゲームは広い層にとって親しみやすく面白いものであるべきだ。そしてどんな題目を差し込んでも、人々はプレイしたがるだろう」とコンファレンスに参加したシアトルのゲーム会社のグレッグ・カネッサは言う。彼の会社は「カジュアルゲーム」と呼ばれる分野に特化しているうちに、いつの間にか医療ゲーム市場に入って行くことになったとのこと。

その会社が実施したゲーム顧客2100人に対する調査によれば、88%がゲームをプレイしてストレスが緩和されたと答え、75%が「頭の体操」と言い、8%がゲームで慢性疼痛や疲れがとれたと回答したという。

実際にコンファレンスで紹介された医療ゲームだが、10代のがん患者向けのゲーム「Re-mission」、肥満防止を子供に訴えるゲーム、病気治療シナリオを選択するゲームなどがデモンストレーションされた。

コンファレンスに参加した医療保険会社HUMANAのミグエル・エンカルナカ医師は「医療ゲームの優位性は広範囲のオーディエンスに到達することだ。だが問題は、人々に正しい影響を与えることだ。ゲームは娯楽を超え、真に人々を助けなければならない。」と述べた。「たくさんの親がシューティングゲームにうんざりしている。もし、シューティングゲームから人々を動かし、それに代わるものがあれば、それはうまくいくんじゃないか」。うーむ、しかし「娯楽を超えた」ゲームとは一体何だろう?

この医療ゲームの公開アイデア・コンペは9月26日までウェブ上で開催される。ChangemakersはRWJFから総額5百万ドルの資金を供与されているので、このコンペ当選アイデアにも少なくない賞金が提供されるはずだ。なお詳細はこのページで。

また、選考委員や選考基準などすべてウェブサイトに公開されており、非常にコンペ選考過程の透明性は高い。このあたり、近頃日本で「某コンソーシアム」とかいう団体が、選考委員はおろか選考経過さえ明らかにしないまま発表した、下手をするとお手盛り選考にさえなりかねない「プロジェクト認定」とは大違いでありますな。

さて、医療とゲームに接点はあるのだろうか。たしかにたとえばその目的を「教育」におけば、患者教育のためのゲームはありそうな気がする。だがゲーム会社の調査結果にあるように、「ゲームでストレスが緩和し、慢性疼痛がとれた」など「ゲームの医療効果」までくると、これはこれでやり過ぎのような気もする。やっぱり。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>