医療Webの貧困

authoritarian

TOBYO開発の背景には、これまでの日本の医療関連Webに対する当方の失望感がたしかにある。これはこのブログでもたびたび指摘してきたが、たとえば医療機関のサイトなど、「院長あいさつ」などに代表される無意味なコンテンツが目に付き、生活者や闘病者のために役立つ情報は少ない。情報経路はワンウェイであり、コミュニケーションを創り出そうという気配は微塵もない。

他の分野におけるWebサービスの進化は目覚しいものがあるが、医療分野になるとなぜこうも新しいサービスが出てこないのか、という疑問を常に持っていたが、結局、自分で作るしかないとの結論に達したわけだ。

だが、「なぜ、医療分野で新しいサービスが出てこないのか」という問いは、今、改めて問い直しても良いのかもしれない。そこに、何か新しい発想やアイデアや行動の芽を摘み取り、参画してくるプレイヤーに自己抑制を強いるものがあるとすれば、その原因を一度しっかりと徹底的に抉り出すべきかもしれない。

まず「権威主義の閉域としての医療」という問題がある。10年ほど前に出てきた「eヘルス」とか「インターネット医療」などという動きを振り返れば、ベンチャー企業主体の自由な運動というよりは、むしろ学者、医療者、官僚など「肩書き」を持った方々が名簿にズラズラ名を連ねるような、そんな「団体行動」のほうが多かったような記憶がある。旧来のエスタブリッシュメント陣営が、やはり医療業界では他を圧していたのだ。

何か新しいことをするにも、まず「権威筋」の「肩書きオンパレード」から出発するというような発想の貧困さを、この「権威主義の閉域」は強いて来たというべきか。そして、これは今日でも延々と継承されているのだ。(「肩書きオンパレード」だけで終わっている、あるいはそれ以外に内容のない団体まである)。

そして他方、多数輩出したのが医療機関検索サービスである。これら検索サービスは、医療機関の基本情報の一部を提供しているに過ぎず、とても生活者や闘病者の医療機関選択に寄与するとは言いがたいものである。なおかつ、これら検索サービスは「ホームページ制作」サービスと抱き合わせになっているものが多く、結局は自社サイトへのあからさまな「囲い込み」を意図したものに過ぎなかった。

これらの検索サービスに共通するものは、「生活者ニーズの軽視」ということだ。結局、生活者に役立つ情報サービスにはなれず、「病院、診療所のホームページを格安で作ります」という請負業にとどまるのだが、「患者集客効果、抜群!」などの虚偽誇大訴求が、いまだにまかりとおっているような「前時代の遺跡」業界なのである。

以上を要約すれば「権威主義と生活者ニーズ軽視」という結論に到達する。ここからいかに遠く離れて行くか。これを決意しなければ、おそらく医療Webは何も始まらないのだろう。

いや、Webだけの話ではないのかもしれない。この「権威主義と生活者ニーズ軽視」が、もともと医療が抱える問題なのかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>