手軽に音声情報でニュース配信できるポッドキャスト。以前のエントリーでも取り上げたが、その後、医療情報提供サービスが充実してきている。
まず米国政府機関であるAHRQ(医療品質研究調査機構)のポッドキャスティングサイト“Healthcare 411”が充実している。その活動ミッションとして「すべてのアメリカ人のための、医療の品質、安全、効率と効果の改善」を掲げるAHRQ(「アーク」と読む)だが、全米医療機関評価プロジェクト”HCAHPS”を推進してきたことが思い出される。
余談となるが、このHCAHPSは「単一の共通尺度で全米の全医療機関の品質を計測し、すべてのデータを国民に公開する」ことを目指す遠大な国家プロジェクトであり、その成果は徐々に姿を見せ始めている。英国でも同様のプロジェクトが進められているが、なぜ、日本の官庁は無関心を決め込んでいるのか?。このようなプロジェクトこそ政府機関が取り組みべきもののはずだが。
本論の医療ポッドキャストに戻るが、この”Healthcare 411”。政府機関のサイトとは思えぬ出来である。このサイトの目的をAHRQディレクターのキャロリン・クランシー医師は、「われわれのミッションを最新の技術を使って説明するものが411だ。411のストーリーは、AHRQの調査研究から選ばれた研究成果を、消費者、雇用者、医療機関と研究機関、教育機関やその他に知らしめるものだ」と述べている。
提供するコンテンツは下記のようなタイプに分類されている。
- ニュースキャスト
5分から10分程度の医療関連番組。医療関連ニュースを中心に、毎回、医療業界の話題人のインタビューを含む。 - スペシャルレポート
AHRQからのタイムリーなニュースレポート - 「コンシューマーと品質」インサイダー
キャロリン・クランシー医師インタビューによる消費者関連トピック - 医療機関インサイダー
キャロリン・クランシー医師インタビューによる医療機関トピック - PSA(Public Service Announcement )
消費者向けの公共衛生情報 - ラジオキャスト
医療関連トピックとPSAの2分前後のハイライトプログラム - オーディオニュースリリース
90秒程度の医療関連ヘッドライン、ショートコメント
各プログラムは直接PCで聞くことも、iTunesなどのポッドキャストソフトで定期購読することも可能。すべてのコンテンツにはテキストデータが付されており、ビデオコンテンツも増えてきている。またこの411のコンテンツは、AppleのiTunes、YahooのPodCastsなどをはじめ、健康関連のWebサイトおよびコーナーにも配信されている。
日本でもiPodが普及しているので、医療情報をポッドキャスティングで配信するサービスはすぐに実行が可能だ。一時期、獨協大学病院がラジオ番組をiTunesに配信していたが、その後どうなっただろうか?。
日本の医療機関Webサイトは同質化が著しく、まったくつまらないし、また生活者がほしい情報がほとんどないという悲惨な現状だ。「こぎれいなパンフレットを作ればいい」という発想から、いいかげん卒業してもらいたいものだ。これは医療機関のみならず、サイト制作者にも言いたい。延々とフラッシュムービーを見せるような医療機関サイトは、早くなくなってほしいものだ。
きれいにゴージャスに見せるパンフレットではなく、医療情報をポッドキャストでシンプルに配信するだけで、他の病院や診療所と差別化できるのだ。医師が生活者・患者に向けて、肉声で病気や健康について役に立つ短い情報を語りかけるだけで、充実したコンテンツになるはずだ。それだけで、日本の医療Web全体が豊かになっていくのだ。コストもかからない。
三宅 啓 INITIATIVE INC.
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