先月6月、闘病体験共有サイト“CaringBridge”が開設10周年を迎えた。米国ミネソタ州を本拠とするこのサイトがローンチされたのは1997年。以来、患者と家族・友人のコミュニケーションを取り持つ無料サービスとして支持され、これまでに63000ページの患者ページを収録している。闘病体験共有サイトとしては、おそらく最初の世代に属するサイトである。
創設者の体験がきっかけ
“CaringBridge”を運営するのは非営利団体のCaringBridge.org。創設者のソナ・メーリングス氏の友人夫婦が、10年前に危険な出産を体験した際、病状を友人夫妻の家族・知人に知らせることを引き受けたことから、このサイトの基本アイデアが生まれたという。
はじめにソナは関係者全員に電話をかけようとしたが、時間がかかりすぎ効率が悪いことを痛感した。「あの時分、私はウェブページデザインのコンサルティング・ビジネスをやっていたので考えたんです。ウェブサイトを作ってみんなに知らせたらどうだろうかって」。その時、”CaringBridge”が誕生したのである。
CaringBridge.orgは、パートナー企業や団体からの寄付と広告によって資金を賄っており、現在、選任スタッフは20名に達する。
シンプルな機能
このサイトは、非常にシンプルな闘病体験共有サイトであるが、この「シンプルさ」が逆に長続きした秘密なのかも知れない。ある意味では、患者・家族・知人に限定したスモールサークルのSNSと見ることも出来る。つまりこれも、クローズド型の体験共有方法に分類される。そこがいささか残念だ。「体験共有のレンジ」を家族や友人知人に限定するのではなく、広くパブリックスフィアへと拡大して行くべきだとも思える。だが、10年前にこのような闘病体験共有サービスが無料で公開され、しかも現在まで維持運営されてきたことに対し、率直に敬意を表したい。
だが、今日ではブログやSNSなどを以前よりも簡単に利用できる機会が増えている。”CaringBridge”の独自性や差別化ポイントをどのように訴求するかが、今後問われるのかも知れない。