米国CMS、PHR比較調査プロジェクトを開始

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CMS(the Centers for Medicare & Medicaid Services:米国の高齢者、低所得者向け公的医療保険)は、先週、どのPHRツールや機能がもっとも被保険者に使いやすいかをテストするために、18ヶ月間に渡る調査プロジェクトを起動すると発表した
CMSの調査概要

調査対象となるPHRは以下の健康保険機関から提供される。

  • HIP USA
  • Humana
  • Kaiser Permanente
  • University of Pittsburgh Medical Center

それぞれの健康保険機関は、この調査プロジェクトのために、ユーザーが健康管理のために使用するPHRを提供する。PHRは患者個人の健康状態、入院記録などの情報を収録するが、CMSからデータは自動的にアップデートされる。また、ユーザーが他の情報を自分で付け加えることも出来る。

18ヶ月の調査期間終了後、PHRのどの機能を被験者は好んだか、いかにPHR利用を促進すべきか、などについてCMSは調査データを分析する予定。つまり、この調査は現に存在する保険機関PHRを選択するものではなく、PHR機能の使用実態を調べることによって、今後のPHR標準仕様策定などに資するデータを得ることが目的であるようだ。

PHRが医療ITの中核システムへ?

最近の米国の医療IT動向をウォッチングしていると、国家プロジェクトとしてのNHINを始め、EHRやRHIOなど様々なシステムが同時並行で進化して行く中で、PHRの重要性が徐々に高まってきているように思える。

結局、EHRにしても「個別業務システム」という域を超えられないのであるから、これら種々散在するシステムから横断的に個人医療情報を一カ所に集約する必要があり、それがPHRになる可能性が強まってきているのだ。その意味で、CMSのような公的医療保険機関がPHRの調査プロジェクトを開始することの影響力は大きいだろう。また今回の調査プロジェクトではCMSのシステムに保有された個人医療データを、自動的にPHRへ書き込むようになっており、これは将来の「EHR→PHR」というデータ集約を暗示させるものでもある。

現在、PHRは保険者、雇用者、専業者、医療機関など関係者が入り乱れて独自仕様のものを提供しているが、これらはすべて”Lock In”(ユーザー囲い込み)を目指すものであり、ユーザー視点で作られていないという批判が強い。生活者への浸透もほとんど進んでいない。その意味で、横断的なPHRプラットフォームをめざす“DOSSIA”プロジェクトが注目される。

だが、「本命」はどうやら”GoogleHealth”であるとの見方が、最近ささやかれている。これについては追ってレポートしたい。

また、日本ではEHRばかりが過度に注目されているが、ユーザーのフロントに位置するのはあくまでPHRであることを想起すべきだろう。

Photo “Morinomiya Medical Treatment University” by Colbwt

http://www.flickr.com/photos/colbwt-archi/509516700/

Source:AHA News, Modern Healthcare, United Press International

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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